アパレル業界は どうなるのか

 毎日パソコンを開けていると色んなメールが届く。怪しいメールも多いが、もう一つ目立つのはアパレルメーカーからのメールだ。サンヨー、オンワード、R-Online(旧レナウン)他からこれでもかというくらいのメールが来る。もちろんわたしがこうしたメーカーのオンラインストアに登録してあるから来るのだが、その送付の頻度がすごいのだ。例えば5日間のオンラインセールがあるとすると、その前に何度か来るのは当然だとしても、セール期間中にも毎日来る。それも会社からの1通ではなくてブランドごとに来たりする。こうなると内容が変わっている(例えばもっと安くなっているのでは)のかと思い毎日見てしまい、内容に変化がなくてもなんとなく買ったほうがいいかな、などと感じてしまうから怖い。しつこいフォローもそうだが、やはり値引き幅が大きいのが買おうかと思う一番の理由だ。定価の半額は普通で、70から80%オフなども多数ある。こうなると定価とは何だということになってしまうが、採算悪化に悩む企業としては何とか在庫を処分したいと願っているのだろう。

 

 大手のアパレル会社がこうした状況に陥ってしまったことについては、もうたくさんの議論や分析がなされてきたのでここで詳細は繰り返さないが、一言で言えば時代の波を掴めなかったことだ。元々は時代の波に上手く乗ったことで成長拡大してきたアパレル企業が、時代の波に乗れなくなって衰退してしまうのを見ると、消費者の変化に対応し続けることの難しさが分かる。このことは現在成功している企業も、いつか同じ状況に陥る可能性が高いことを意味している。戦略の見直しや企業体質の変化を恐れずに行っていかないと現在の栄華は長くは続かないのだ。

 

 サンヨーやオンワードが大幅値引きをしてネットで在庫処分を行うのは、過去の商品を売り切ることで過去の販売政策そのものを断ち切ろうとしているのだろう。これから新しい品揃えにする際に、生産数や品種も減らして大きな在庫が残らないようにする、そして在庫処分の安売りをしないですむようにする意図が感じられる。その結果利益率を高めようとしているようだ。そうした目論見は理解できなくはないが、はたして期待通り上手くいくだろうかという疑問はある。以下の点がその理由だ。

  • 在庫処分のために大安売りをしたら、その商品のブランド力は落ちてしまうのではないか。言い換えると商品が新しくなっても消費者はそのブランドのものを定価で買う気にはならないのではないか。
  • そもそもこれらの企業の売れ行きが落ちたのは、その商品の価格がユニクロやGUのものと比べて高すぎたからではないのか。消費者はファストファッションと比較してデザインや品質の差以上にに価格の差がありすぎると感じているのではないか。その価格差を正当化するほどのブランド力はない。
  • リモートワークが進むと高価格の衣服は必要性が低くなり、清潔でちょっとオシャレな、そして安い価格の物が求められるのではないか。

 こう書いただけでもサンヨーやオンワードの復活は容易ではないような気がする。だからといってファストファッションがメインの選択になるかというとそうも思えない。 多くの人は自分に合うオシャレな服を着ることで自分らしさを出したいと思っているはずだ。ユニクロ、GU, H&Mは悪くはないけど、どこでも手に入りみんなが着る服ではなく、もう少し高くてもオシャレ感がある服を求めている気がするのだ。それを着ると満足感がありハッピーな気分になれるような。こんなニーズに応えるのがアパレルメーカーの役割のはずだ。ビジネスでもカジュアルでもおそらく世代、仕事、趣味、ポジションなどに応じたデザインと価格で、複数の販売チャネルで購入する商品になるのだろう。これを明確な戦略にして具体的な商品として提供できた会社が復活できるのだと思う。音楽や文学や絵画が人生の楽しみであるようにおしゃれもそうだ。ぜひアパレルメーカーには頑張って欲しい。