中古ゴルフクラブ業界はどうなるのか?

 自宅から車で5−6分のところにあった中古ゴルフクラブショップが閉店した。フランチャイズ制のチェーン店のようだったので、その店のオーナーが商売を見きったのだろう。私はその店を割合良く利用したが、もっぱら不用なクラブを売りに行くだけで、買うことはほとんどなかった。何故かというと中古クラブの売値が特に安いと感じなかったからである。具体的に言うとインターネットなどで売られている新品のクラブの値段と中古の値段があまり変わらないので、わざわざ中古を買うメリットを感じなかったのだ。これはこの店が特に高売りしているからではなく、新品のクラブの値下がりが非常に大きいことによる。私は中古クラブ市場の事情に詳しいものではないが、10年前と比べると明らかに中古クラブ市場は厳しくなっているだろうと感じる。

 5年前くらいまでは中古クラブ市場における未使用品(新品だが何らかの事情で中古ショップに持ち込まれたもの)の価格は、普通の新品の市場価格より10%くらい安かった気がする。そして一世代前の中古クラブだと、傷などの程度によって値段の差はあるものの、新品のクラブより大幅に安かった。中古であることを我慢すれば、格安の値段で同じクラブを手に入れることが出来たのである。しかし最近は上述したように新品のクラブとの値差が小さいので、中古ゴルフショップの存在意義は不用クラブの買い取りになりつつある。しかし当然のことだが、買い取るだけでは商売にならず、買い取ったものが売れなくてはならない。このサイクルが上手くいかなくなっているようだ。

 具体的に新品と中古クラブの値段を見てみよう。一番買い替えが多いドライバーの人気商品3つをとり上げる。クラブのスペックとしては最も需要が大きい10.5度のSRとRで比較する。三本とも定価は84,000円である。

 ゼクシオセブン2012     新品  38,000−46,800円
                   中古  27,800−39,800円

 グローレ2012         新品  37,500-45,800円
                   中古  31,800-43,800円

 ツアーステージPhyz 2013 新品 43,800-50,800円
                   中古  29,800-45,800円

 上記は私が調べた範囲のものなので必ずしも正確ではないかもしれないが大体の傾向は当たっていると思う。また中古の価格差は主に傷の程度によるので安いものは傷が多いが高いものは新品に近いと言える。こうみるといかに去年発売されたモデルが安売りされているかが分かるだろう。(Phyzは今年発売) この業界のベストセリング・モデルのゼクシオは今年の10月に新商品が出たのでこうなっているわけだ。一年前に買った人は多分55,000−60,000円位は払ったと思う。1年待てばこんなものだ。それに引き換え中古のモデルはあまり安くない。恐らくそれほど安く買い取ることが出来ないからだろう。

 新品が出て2年くらいでこれほど安くなってしまうのはメーカーの新モデル発売のサイクルが短くなっているからである。少し前までは人気モデルは3―4年ごとに新商品を出したが、最近は2年で次の商品が出てくる。だから前のモデルの在庫が残ったままなので安売りをせざるを得ないのだ。新商品と言っても性能がよくなったわけではないことをユーザーも良く知っているから、すぐには飛びつかない。(本当の問題は腕なのだから) 昔クラブヘッドがパーシモンからメタルに変わり、さらにはチタンになった時のような大きな技術革新があれば別だが、そうでなければ単なるイメージの変化だけだ。まあこうなるとファッション製品のようなものなので、季節が終わるとバーゲンで在庫処分をするのと同じになる。

 またクラブの原価が非常に安いので定価の半額以下といっても十分儲かるという事情もある。原価は定価の10%くらいだろうから、かりに7割引き、上記のドライバーなら25,200円、で売ってもメーカー、流通、小売みんな儲かるのだろう。だから在庫を処分するためには上記のような価格で売っても良いことになる。しわ寄せは中古クラブ販売業者に行くわけだ。

 となると中古クラブ業者の存在意義は何だということになるが、もう少し古いクラブの販売ということになるのかもしれない。少し古びているが性能は変わらないクラブが定価の3割位で買えるとなると若い人や初心者には便利なのだろう。クラブはパターを入れれば12−14本くらいは必要なので全部そろえると安い買い物ではないからだ。しかしこうしたターゲットで一定の市場は確保できることは分かるが、新製品発売のサイクルが短くなった以上、昔のような商売は出来ず、市場の縮小感はぬぐえない。

 環境要因が変わったのだから、中古クラブ業者が10年前と同じような商売が出来るわけではない。だから生き残る店になるには従来と同じことをしていてはだめだ。どうしたらいいのかと問われて答えが出せるほど商売は簡単ではないが、私には中古ゴルフショップに期待することがある。それは旧モデルの新品(未使用品)をそろえることだ。

 ゼクシオは今回のモデルで8代目だが、必ずしも最新のものがすぐれているわけではないと思う。3代前のものが良かったが、もう新品は買えないので新しいモデルを使うという人がいるはずだ。わたしはキャロウェイ派で、アイアン、ドライバー、フェアウェイウッドは主にキャロウェイを使っている。どれも何世代か前のモデルで今でも使いたいなというのがある。そうなら中古クラブを使えと言われそうだが、新品なら使いたいが中古なら最近のモデルの新品を買う。前述の通り値段が安くなっているからだ。

 特にX-22アイアンは6年前のモデルだと思うがわたしは3年前に買って以来主にこれを使っている。その後の後継モデルは好きになれないのだ。たまにスチールシャフトの新品が出ることもあるが、カーボンのものはまずない。もう1,2年したら新しいアイアンに買い替えると思うが、X-22は有力な候補だがまず買えないと思う。こうした数は多くないがこだわりを持つ客に対して、旧モデルの新品を多く集めた中古ショップがあってもよいと思う。とても古いものは無理だろうがこの点を意識して過去7-8年のモデルからこれをやったら面白いのではないか。

 素人考えなので専門家から見ると荒唐無稽かもしれないが、中古クラブ市場活性化とショップの差別化の一つのアイデアではないかと考えている。