戦術家でいいのか;菅首相

 菅首相の評価、人気が下がってきたようだ。苦労人、庶民派として好感を持たれて政権をスタートしたが、本当に庶民の味方なのか、リーダーとして相応しいのかといった疑問が出てきている。自らの政策への批判を強気に抑え込もうという姿勢から度量の狭さや柔軟性の欠如を感じる人が多いようだ。国民を引き付ける人間的魅力、国を引っ張るための先を読んだしたたかな思考が感じられない。

 菅氏は抽象的な議論や理念や哲学を語ることを好まないという。確たる理念や哲学を持っているがそれを話さないのではなく、興味がないかもともと持っていないようだ。一方で細かな政策の実施には強いこだわりがあるようだ。デジタル化の推進、携帯料金の引き下げ、GoToキャンペーンの実施などである。これらが間違ったことだとは思わないが、これを行って何を得るのか、どんな社会を作るのかといった議論があまりに少ない。国民は経済的なメリットがあれば満足で国家の将来像など興味がないと考えているようだ。確かに国民を食わせる(豊かにする)ことは政治家のもっとも重要な仕事の一つだ。それなくして国家や社会の安定はないことは歴史を見ても他国を見ても明らかだ。

 

 しかし一方でこの国の将来をどうするのかといったデザインを示すのも政治家の責務だ。理念なりビジョンを訴えて理解を得ることは中長期に国力を高めるのに必要だ。国民は信じることができる国家像やビジョンがあってこそ、我慢すべきことを受け入れリーダーについていくのだ。経済が回ればいいというものではない。菅氏はある意味で極めて有能な政治家だ。それはある戦術をとり実行する時に発揮される。地盤、カバンがないところから総理大臣まで昇りつめたのも、現実的な戦術をやり通すことに長けていたからだろう。しかしその成功体験が強烈なだけに、菅首相は広い視野でものを見て将来像を語ることをおろそかにしているように思う。自分の政策に固執して批判者を認めないことにも通じる。

 

 総理大臣に求められるのは国民に夢を話し共感を得ること、そしてその実現のために戦略をたてることだ。その次に実際的な戦術をとり徹底して行う。総理も人間だからすべて分かっているわけではないので自分に弱いところ、出来ないところは適切な人に移譲してやることになる。しかし理念と戦略は総理大臣が深く関与すべきところだ。戦術を作って実行するのは人に任せることになるが、結果について総理としてこれだけは譲れない点を明確にしておかなくてはならない。例えば小泉純一郎郵政民営化を実現したが、現在の郵政3社の状況は相変わらずの官僚体質で効果を上げているとは思えない。これは小泉がデザインを描くまでは良かったが、民営化の実施の戦略、戦術に関して第三者に丸投げをしたからだ。小泉元総理は大きなデザインを語るのは上手かったが、それをどう実現することには興味がなかったというか、そうした能力が欠如していたと思う。菅首相はその反対だ。戦術への関心のみが高い。小泉氏とどちらが良いかは難しいところだが、総理としてはやはり小泉氏の方がおさまりがいい。歴代の総理大臣では中曽根康弘が、ビジョンを描くことから戦術を実施することまで上手くやっていたように思う。

 

 今のままでは菅首相は総理の器ではなく、参謀だという評価になってしまうと思う。政権は始まったばかりなのだから、信頼できる参謀を見つけて理念なりビジョンを語ることをしたほうがいいのではないか。すぐに菅氏に代われる人材がいるとも思えないだけにそう思う。将来的にもそうした人材はいるのだろうか?国会議員より地方の首長に期待したほうがいいのだろうか?トランプの米国のようにしてはならない。

「ブッダのように私は死んだ」から坂本冬休み、BackNumberまで

 今週の週刊文春坂本冬美が満載だ。阿川佐和子の対談’この人に会いたい’のゲストは坂本冬美だし、文春の巻頭を飾る原色美女図鑑のモデルも坂本冬美だ。人気連載エッセイ桑田佳祐の’ポップス歌手の耐えられない軽さ’のテーマも坂本冬美だった(天童よしみが少々)。なぜこんなに坂本冬美かというと彼女の新曲が話題になっているからだ。それは桑田佳祐が作詞作曲した「ブッダのように私は死んだ」という歌だ。桑田のファンだった坂本冬美が頼んだのに応えて桑田が作ったらしい。そのあたりのことは阿川との対談と桑田のエッセイに書かれている。

 

 早速YOUTUBEで検索するとミュージックビデオと歌詞入りの歌唱ビデオが見つかった。曲は演歌調だが軽快なリズムに乗っているので古臭くはない。石川さゆりの「天城越え」と曲の雰囲気が似ている。歌詞も面白い。桑田が坂本にこの曲で’歌謡サスペンス劇場’を演じてくれと言ったそうだが確かにそんな物語の歌詞だ。愛した男に捨てられる女の話だが、その男がテレビに出ているというくだりにはだれかモデルがいるのではと勘ぐってしまう。ミュージックビデオはまさに超短編のサスペンス劇場の出来栄えで、最後には船越英一郎が出てくるのではと思わせるほどだ。曲だけではなく一見の価値があるビデオだ。坂本冬美の歌唱力はすごい。

 

 阿川佐和子との対談で坂本冬美YouTubeも面白いと話題になっていたのでチェックしてみた。坂本が自宅で家庭用のカメラに向かって歌の練習をしたりする飾らない姿がほのぼのとして楽しい。Youtube をどんどん見てゆくと坂本冬休みという人の動画が現れた。この人は物まねタレントで名前の通り坂本冬美のマネを得意にしている。有名らしいのだが、わたしはこれで初めて知った。他のタレントのマネもうまく面白いので驚いた。わたしが見たのは由紀さおり八代亜紀中島みゆきなどだが、歌だけではなく見た目も似せている。調べると他にも何十人の物まねをするそうだ。この人は’冬休み日記’というブログも書いていて、短い内容が多いがそれなりに興味深い。

 

 NHKのSongsを見ていたら、Back Numberの特集をしていた。興味があるバンドなので楽しめた。若い人たちに凄い人気があるロックバンドだが、なぜわたしが知っているかというとわたしのギター楽譜本(岡村明良編)にBack Numberの「花束」という曲が入っていてとても気に入って練習をしたからだ。それまで彼らの名前も知らなかったのだが、ギターアレンジしたもので知ることになった。彼らの原曲はイントロなど結構ギンギンのロックなのだが、岡村明良はこれを美しい曲にアレンジしていて、わたしはそれを主に車で聴いていて好きになったのだ。自分で弾くようになって原曲を確かめたらイントロでエレキがバリバリやるのと、歌詞がユニークなのに驚いた。どうユニークかは聴いて確かめていただきたい。Songsでも取り上げていたがみずみずしい感覚があふれた歌詞が若い人を引き付けるのだと思う。「花束」は2011年リリースだが、2013年に発表した「高嶺の花子さん」もとてもいい。ボーカルの清水依与吏が作詞作曲をしている、3人のバンドでその他に3人のサポートがいてギターやキーボードを弾いている。2004年に群馬県で結成され、2011年にメジャーデビューしたそうだ。

 ギターアレンジの「花束」は結構長いバージョンで指使いも多彩なので、わたしは楽器屋でギターを試奏する時などよくこの曲を 使う。すると店の兄ちゃんがオッという顔をしたり、今の曲をやりますねーなどと言ってくれるのでわたしは少し気分が良くなる。古賀メロディーはないだろうが、拓郎とか陽水を弾くと思っていたのかもしれない。Back Numberは今後も注目だ。

 

 「ブッダのように私は死んだ」に戻ると2番の歌詞に’他人を見下した目や、身なりの悪さは赦す。ただ箸の持ち方だけは無理でした’というのがあるが、箸をうまく持てないわたしには厳しい。小さい頃祖母にいつも注意されて練習させられたがやはり出来なかったのだ。欠点が多いわたしだが、これもその一つだ。「昔からの家で育ったのになぜそうなの?」と妻に何度も言われた。「桑田覚えていろよ」と言いたいくらいだ。   

 

 

ギターオヤジは今日も行く

 TVを見るとトランプ現大統領が相変わらずのフェイクスピーチをしていて、つくづく嫌になる。こんな大統領がいたことは米国の恥として記憶されるだろうと思うのだが、日本にも結構支持する人がいてTVで得意になって発言してるのには驚く。こんな輩の多くは逆張りをしているのだろう。これをやれば目立つし、読みが外れても損するわけではなく、当たれば目利きとしてTVでの評価が高まるというわけだ。トランプ本人の発言で疲れた上に、こんな輩の話を聞くと精神衛生上悪いので、ギターオヤジは下手も顧みず新たなギター遊びにチャレンジする。

 

 8月31日の当ブログで自分の演奏を録音するためにオーディオインターフェイスコンデンサーマイクを買ったことを書いた。音楽編集のソフトウェアをインストールしてどうにか録音にこぎつけた。以前の録音に比べれば良くなってはいるがもう一つ迫力がない。わたしの演奏が下手だからと言えば その通りなのだが、編集ソフトを十分に使いこなせていないのかなという気がする。元々使おうと思っていたStudio oneというソフトが上手く動かず、Audacityというソフトにしたせいかなとも考えるがよく分からない。コロナを避けるため12月から3か月ほどギターのレッスンを休むのでその時にもう一度調べてチャレンジしてみようと思う。

オーディオインターフェイスとマイク、そして録音に使ったギターOOO28の写真です。

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 さらに思いついたのは、わたしのような下手が生ギターをそのまま演奏録音してもうまくいきそうもないので、エレアコで録音したらということだった。エレアコとはエレクトリック・アコースティックの略でアコースティックギターにマイクや弦の振動を感知するコイルを付けて、アンプで鳴らすというものだ。わたしはヤマハのエレガット(エレアコの一つだがナイロン弦を張ったガットギターでアンプにつなげるもの)を持っていて時々弾くのだが、生で弾くよりは音も出るし効果音もつくのだがあまり大きな違いを感じなかった。 

 今回やろうと思ったのはスチール弦のフォークギターに取り外しが可能な装置(ピックアップという)を付けることだ。ギターはマーティンを買って以来冷たくしていたK.ヤイリを使うことにした。高いものを買ってまた上手くいかないとまずいので、ギターのサウンドホールにはさんで使えるマグネットタイプのピックアップで7000円ほどのものだ。ピックアップからはコードが出ていて、これをアンプに繋ぐと音が出るという極めて簡単なものだ。下の写真はヤマハのアンプに繋いだ様子と、サウンドホールについたピックアップ。

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 ピックアップが少し斜めに付いているのはまっすぐに付けると、一弦の高音部(12フレット)あたりを弾くとピックアップに接触して音が出なくなるからだ。ピックアップの右側を変えずに左を動かすとサウンドホールの幅のほうが大きく上手く固定できない。これはやってみて分かったことだ。

 

 さて肝心の音だがこれが中々凄い 。ガットギターに比べると鳴りがはるかに良く、色んなイフェクト機能もはっきり分かる。生音とは違うがこれはこれで悪くない。やはりスチール弦のほうが相性が良いように感じる。そしてもう一つの利点は弦を強くひかなくても大きな音が出ることだ。生で弾くとわたし程度の技術だとどうしても音が弱く迫力がない。教師はガットギターでわたしにお手本を示すのだが、音の鳴りの違いにいつも落胆する。わたしも強くひこうとするが限界があるし、それ以上強くひこうとすると間違えてしまうのだ。生を練習するのが優先なのは変わらないが、新しい楽しみが出来たし、これで録音したらどうなるか興味深い。

 

 もう一つのチャレンジは新しい教本を買ったことだ。今までは岡村明良と南澤大介の2冊の計3冊の中から曲を選んでいたがもう一つ選択肢を持とうと思ったのだ。松井祐貴のハイテク・アコギ名曲集という本である。楽譜を見るとこれがいかにも難しそうなので、最初の説明から読み始めた。演奏の前にとして色んな奏法やチューニングの説明がある。チューニングではノーマルチューニングと6弦を一音下げるDrop D Tuningの他に6弦に加えて1弦も一音下げるDouble Drop D Tuningとか5弦まで下げるチューニングがあって手強さを感じさせる。

 特殊奏法の練習でもしてみるかと思い、ネイル・アタック(アルペジオ;分散和音を弾く際に一音だけ上から爪でたたいて鳴りを消す)をやったら、5発くらい叩いたところで中指の詰めに白い筋が入り先が割れた。ここはこれまでも何度か痛めたところで(ギターを弾いてではなく、爪を伸ばしているため何かしようとすると指ではなく爪がドアなどに当たり割れていた)そのたびに釣り具屋に行ってアロンアルファの釣り名人を買って補修してきた箇所なのだ。この半年くらいは割れずに爪が強化されたかと喜んでいたら簡単に割れてしまった。 その他パームと言って中指でコードを弾きながら右手の付け根でボディを叩くのもやったがとても難しい。ハイテクへのチャレンジはかくも危険だとよく分かったがまだ諦めるのは早そうだ。あと何年練習できるか分からないが生きているうちにこの教本の曲を弾けるようになりたいものだ。 

 

 

YouTuberの格闘家

 Netflix加入以来Youtubeにもはまっていることを前々回のブログで書いたが、格闘家の動画が想像以上に面白く最近よく見ている。朝倉未来(みくる)、安保瑠輝也久保優太などの動画サイトを見ることが多い。朝倉未来総合格闘技の選手で、あとの二人はK1の選手だ。それぞれ各競技団体でのチャンピオンや元チャンピオンだが、格闘技をあまり見ないわたしはyoutubeを見るまで知らなかった人たちだ。動画の内容は大体同じで、主にスパーリングの様子(特に違う格闘技の選手を招いての練習は興味深い)と日常生活、それと一般ユーザーとのスパーリングだ。特に最後のジャンルは街で喧嘩自慢の若者に声をかけてジムで練習をするものでとても面白い。これは朝倉選手が始めた企画で他の格闘家もまねしているようだ。

 

 もっとも街で喧嘩自慢に声をかけたのは最初の何回かだけで、人気企画となってからは全国の腕自慢(格闘技練習者)からの申し込みが主体のようだ。前記の3選手は人気格闘家だけにスパーリングをやってみたいという腕自慢が沢山いるからだ。ゴルフの上手いアマチュアは一流ゴルファーとラウンドしてみたいし、野球の経験者ならプロの一流投手の球を打ってみたいというのと同じだろう。

 

 町の喧嘩自慢にも二通りいて、本格的に格闘技など習ったことはないが腕っぷしには自信があって喧嘩をやるというのと、もう一つは上記の腕自慢のように格闘技を習っているとか習ったことがあるとか、地下格闘技の試合に出ているという人たちだ。当然想像できるが前者はスパーリングをやってもまるで話にならないレベルだ。ブンブン腕を振って殴りにかかるがまるで当たらず、1分もやると息が切れてきてボディを軽く殴られると悶絶してしまう。プロとはやはり凄いもので特にチャンピオンなのだからその強さは半端ではない。怪我をさせないように相当手を抜いてやっているのだろうが簡単にノックアウトされてしまう。わたしにはよく分からないが、こうしたまるで素人に対しては10%くらいの力しか出していないように見える。その歴然たる力の差と軽く打たれて見事にひっくり返る様はお笑い芸人の体当たり演技を見ているようで可笑しい。

 

 これに比べて格闘技練習者や地下格闘技の選手などはそれなりに様になった戦いになる。プロの方も手を抜きながらも相手のパンチなど受けないように体を動かす。しかしこうした相手でもプロにパンチを当てることはまず出来ない。そして疲れたところでボディなどを打たれるとダウンしてしまう。やはりプロは30%くらいの力でやっているように見えるので、パンチは強烈なのだがダメージとしては深刻ではないようで倒れてもまたどうにか起き上がって戦う。この辺の根性と戦闘意識はまるで素人の喧嘩自慢とは違うがやっぱり歯が立たないことには変わりがない。

 

 このスパーリング動画の先鞭をつけた朝倉選手はyoutuberとしても有名らしく、Tuber Townというサイトを見ていたら彼の動画サイトには150万人のチャンネル登録があって、youtuberとしての年収が4900万円を超すと書いてあった。ネットの他の記事では格闘技選手として5000万円くらいの収入があるそうで合計で1億円くらいの所得はあるらしい。

 

 わたし個人としては久保優太選手の動画サイト(美人の奥さんと二人で出ていて面白い)が好きなのだが、彼のサイトの人気は朝倉選手と比べてずっと小さいようだ。久保選手はチャンピオンのままK-1を引退してアマチュアボクサーとしてオリンピックを目指すそうだ。東京の次を狙うそうだが、年齢的に30歳台半ばになるだろうから大変だと思う。ただ大きい人なので(k-1ではウェルター級で出ていた)日本人の競争相手も少なく代表にはなれそうな気がする。彼は株投資家としてもやり手で相当な資産を築いたそうだから資金的な心配はないのかもしれない。頑張ってほしい。

 

 その他にも多くの格闘系(ボクシング、空手、柔道等)の動画があるが、ボクシングの竹原慎二氏がなまった素人を鍛えるのが中々面白い。しかし前記の3つが群を抜いていると思う。朝倉選手の動画のように多くのファンを持つと凄い収入が得られる(多分視聴回数による広告収入だと思う)ので若い人たちのあこがれの職業としてyoutuberが出てくるのは分かる気がする。

 

 前記のTuber Townによると有名なHikakin氏などは数億の収入があるようだ。前々回のブログで触れたピアニストのハラミちゃんは75万人の登録があり、1700万円くらいの収入があるとなっていて、同じく人気男性ピアニストの’よみぃ’さんは2200万円の収入になっていた。こうなるとyoutuberは立派な一つの職業なのだが、学校などでは教えてくれないどころか、何なのか理解できない教師もいそうな気がする。昔ながらのベーシックな授業、科目も大切だが、世の中の変化を取り入れた授業にしないと若い人たちの興味は保てない。今の学校教育は昔ながらの方法でより良い学校に入るための技術を与えるだけのようだ。 

 

 Youtubeには他にも興味を引く動画がいっぱいできりがない。やはり音楽の動画は充実していて好きなギター演奏を見ているとすぐに時間がたってしまう。ブルースギターの名手といわれる打田十紀夫の演奏も初めて見た。またクラシックピアニストの辻井伸行が世界各地で演奏する動画も思わず見入ってしまう。軽やかで美しいタッチを耳にするたびに日本人として誇りに思い胸が熱くなる。 

小諸の懐古園と富岡製糸場


 11日から3日間長野に行った。軽井沢に2泊したが、今回はゴルフを1回にして観光をした。最初の日に行ったのが小諸の懐古園だ。名前は聞くが行ったことがなかったので訪れた。妻は中学の修学旅行で来たことがあるとのこと。

 

 懐古園小諸城址にあるが島崎藤村との関連で有名だ。特に近くを流れる千曲川を詠った藤村の「千曲川旅情のうた」はわたしたちの世代にはなじみ深く、行ってみようと考えたのはそのせいだ。園内には藤村記念館があり島崎藤村の生涯が紹介され、それにちなんだものが展示されている。当然「千曲川旅情のうた」もあり大きなパネルになっていた他、藤村自筆のものもあった。この詩はわたしたちの頃はたぶん中学(高校かもしれない)の国語の教科書に載っていた。すっかり忘れていたが記念館で’小諸なる古城のほとり・・・’の出だしを読むと懐かしく、続く歌詞を切れ切れに思い出した。50何年たっても体のどこかに残っているようだ。

 

 島崎藤村は小諸義塾という私学に国語と英語の教師として27歳で赴任し、6年間勤務したそうだ。その間に「千曲川のスケッチ」を書き、代表作「破壊」を書き始めたという。その後「夜明け前」などを執筆した文豪だが、わたしは藤村の本を一つも読んでいない 。わたしはいわゆる読書家ではないが本を読むのは好きだ。しかしこの時代の作家は漱石以外ほとんど読んでいない。関心がなかったわけではないが、なぜか読まなかった。高校生の頃読んだ日本人作家はもっと後の人たちだ。川端康成三島由紀夫吉行淳之介遠藤周作などはよく読んだ気がする。ドイツやフランスの作家も好んで読んだ。明確な理由はなく、なんとなく肌に合う、合わないで決めていたのだろう。

 そもそもなぜ島崎藤村の詩が教科書に載ったのだろうか。もちろん名作だというのはあると思うが、ほかには適当な候補がなかったのだろうか。わたしは詩のセンスなどないが五七調でリズムがいいなと感じたのは覚えている。

 話は変わるが、藤村だけではなく明治の作家には文豪と呼ばれる人がいた気がする。大正、昭和の作家にはあまり使わないようだ。外国の作家ではトルストイなどはよく文豪と書かれていた記憶がある。きっと大作家に対する呼び名なのだろうが、これも死語になりつつあるのだろう。豪はすごいといった意味で今でもよく使われるが、文豪だけではなく豪商や豪農なども使われなくなった言葉だ。ユニクロの柳井氏は高名な経営者で大金持ちだが彼を豪商とは呼ばない。前近代的な響きがあって今の時代にそぐわないのだろう。懐古園に行ったらこんなことも考えてしまった。

藤村記念館の写真。

 

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 旅行最終日は群馬県富岡製糸場に行ってきた。2014年に世界遺産に登録されて以来高い人気を博してきた所だが、コロナのせいもあり一時の混雑はないようでのんびり見学ができた。もっとも入れない建物もたくさんあり、見学ツアーに参加すれば見ることのできるものもあったようだが、時間の制約でそれはしなかった。人気スポットのせいか見学ツアーを行うスタッフが上から目線でツアー勧誘するのも煩わしかったのだ。

 

 明治の近代化の一環として作られた製糸場だが、きっと当時はモダンで美しい近代工場だったことがうかがえる遺産だった。明治3年に着工し5年には操業を開始したという。明治後半には日本は世界最大の生糸生産国になり、日本の近代の発展の基礎を作ったところだ。フランス人技師が中心となって工場を作り生産を指導したそうで、敷地内には外国人幹部(今風に言えばexpatriate)の宿舎のほかに寄宿舎(社員寮 )や診療所があり、行き届いた作りになっている。製糸場というとどうしても女工哀史を思い浮かべてしまうが、こうした設備を見ていると当初は当時の日本では最高に近い環境の工場だったような気がする。もし女性工員に対するひどい待遇があったとしたら、ずっと後で日本人だけで操業するようになってからではないだろうか。日本人資本家や経営者が工場労働者(しかも女性)の人権に配慮 するようになるのははるかに後のことだからだ。いずれにしろ明治初めにこんな大工場が完成し、高品質の絹を作り世界に輸出したのには驚くほかはないし、先人の知恵と努力には頭が下がる思いがした。

製糸場の建物と内部

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 女工の絵と診療所と寄宿舎

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ハラミちゃんとアンソニー・ホロヴィッツ

 妻が「愛の不時着」を見るためにNetflixに加入したので、わたしも愛好者になった。Netflix専用のドラマのほかに、既存のドラマや映画を楽しめる。また従来はパソコンで見ていたYoutubeがTV画面で見れるのも嬉しい。ドラマでは昨年話題になった「全裸監督」を見た。村西とおるをモデルにしてAV監督の生きざまを描いて中々の出来栄えだ。主演は山田孝之満島真之介玉山鉄二ほか有名俳優をそろえた豪華版だ。題材ゆえに過激な性的シーンが多いが、不思議と猥褻さなど感じず、何かスポーツの根性ドラマを見ているようだった。 バブル前後のAV業界の裏表が描かれていて興味深い。 

 

 残念ながら今日のテーマはこれではなく、Youtubeで知ったハラミちゃんというストリートピアニストのことだ。公共の場所に置いてあるピアノを弾いてその様子をYoutubeにあげている。都庁にある草間彌生が模様を付けたピアノを弾くシーンが多いが、駅やショッピングセンターなどでも演奏している。はじめはまばらだった観賞者がピアノ演奏の出来栄えにひかれてだんだん増えていく様子や感動する姿に思わず見入ってしまう。弾くのは日本と欧米のポップスやロックが多いが、基本的にはなんでも演奏する。ほんとうにレパートリーは広く無限のようだ。彼女は知らない曲でも一度聴くと大体弾けるようで、そうした様子は家でファンからのリクエストに応える動画に映っている。iphoneを手元に置き、分からない曲はそれで検索して聴いたすぐ後には、ほぼ完ぺきに演奏する。メロディだけではなく、原曲のギターやベースのフレーズも巧みに入れたりするのが凄い。わたしなどには神業にも思えるが、わたしのギター教師も同じようなことをするので、音楽的才能があって何らかの楽器に熟練している人には珍しくないことなのかもしれない。

 

 ハラミちゃんは本名や経歴は不明だが、本人がYoutubeで語っているところによると、音楽系の大学を出て会社勤めをしていた。体調を崩して会社を辞めると家に引きこもっていたが、ある時都庁でピアノを弾いてその様子をYoutubeに載せた。本人は大した期待もしていなかったそうだが、2週間で20万ものアクセスがあったそうだ。その後いろんな場所でピアノを弾きYoutubeで発信しているうちに評判になり、今は70万を超えるチャンネル登録があると言われている。すっかり有名人になり、オリジナル曲を発表したり、ソロコンサートを行ったりしている。TVの芸能界特技王決定戦でも優勝した様子がYouTubeに載っている。しかし今でもストリートピアニストであり続けいろんなところで演奏している。広瀬香美が突然参加してコラボした動画にはわたしも感動した。これには700万を超えるアクセスがあったそうだ。ストリートピアニストは他にもいて男性で有名な人もいる。ぜひYoutubeでどうぞ。

 

 最近感動したことのもう一つはアンソニーホロヴィッツの小説だ。昨年「カササギ殺人事件」を読んですっかり感心して、次作を見つけたのですぐに読んでしまった。この「メインテーマは殺人」も2019年ミステリランキングで7冠制覇した「カササギ殺人事件」に劣らない傑作だと思う。この人は英国人の作家で若者向けのシリーズ「女王陛下のスパイ、アレックス」というので人気を博したそうだ。TVドラマの「刑事フォイル」、「バーナビー警部」の脚本を書いたり、シャーロック・ホームズシリーズや007シリーズの続編を書いたりしたそうだが、わたしは「カササギ殺人事件」を読んで初めて知った。

 

 だからこの作家が以前から今のような形式の小説を書いていたのかは分からない。しかしこの2作を読んで感じるのは小説の設定の巧みさだ。前作はスーザン・ライランドという編集者が担当する作家アラン・コンウェイが書いた「カササギ殺人事件」という小説が紹介される。これが前半だ。まるでコナン・ドイルアガサ・クリスティーかと思われるような英国情緒満載の小説で読者はすっかりその世界に取り込まれてしまう。しかし後半では全く違う展開で事件が起こり、読者は違う小説を読むことになる。まさに’一粒で二度美味しい’のだ。わたしの紹介を読んでもさっぱり分からないというだろうが、これ以上を言うとネタバレになってしまうから仕方がない。

 

 「メインテーマは殺人」は主要登場人物というか語り手がなんとアンソニーホロヴィッツその人なのだ。ホロヴィッツがあるいきさつで元刑事に密着して事件解決に動く元刑事の様子を描き、本にして出版するという設定だ。例えば大沢在昌佐々木譲が自らの小説に出てくるというか主要登場人物になるなんて考えられないのだが、この作家はそれをやってしまう。元刑事は大変有能な男でまさに捜査のプロで、彼から見ると有名作家のホロヴィッツはまるで能無しの役立たずのようになってしまう。作中のホロヴィッツもそれを感じてイライラするところがとても面白い。英国人の諧謔が見事に描かれている。ストーリーを言っては元も子もないので、興味を持ったら読んでください。現代のホームズとワトソンのようでこれもシリーズ化すると言われている。

 

 

 

コロナウィルスと消費者の動向;ジジイの妄想

 日本の株式市場はなかなか底堅く、23,000円台を維持している。今後もこのレベルを保つかやや上昇するという予想が多い。その中で有望なセクターはIT,システム関連だそうで、菅首相のデジタル化の推進や地方銀行の再編などを見据えたもののようだ。こうした予想は当たるかどうかは分からないし、大口の投資家はすでにこうした分野に資金を投入していると思われるので、素人がこれを信じて投資をしてもあまり旨みはないと思う。

 人の予想を当てにするより自分で考えたほうがよほど楽しい。コロナ禍のマーケットはどうなるか素人として思いつくままに書いてみよう。

 

 わたしが大好きな旅行だが、海外旅行は当面パスだ。もう行けないかもしれないとさえ思う。長い飛行機旅はリスキーだし、行き先きの多くが日本よりコロナ感染が多そうだからだ。船旅は飛鳥が客の募集を始めると報道されていたが、行くとしても日本の客船を使ったほうが安心だ。行くのもせいぜいアジア方面だ。1年位前にはフロリダまで飛行機で行き、そこからカリブ海クルーズにでも参加しようと思っていたがとってもそんな気は起らない。近場でゴルフと温泉でも楽しめたらいい。

 

 リモートワークが定着し、マンションのニーズに変化が出るのではと当ブログで5月に書いたが、それ以外にも当然変化はあると思う。まず通勤に必要なものがいらなくなる。スーツとそれに合わせるシャツや靴は最低限のものがあればいい。ビジネス用のバッグもいらない。ネクタイなんて2,3本あれば十分だ。腕時計も人に見せたい高価なものなど不用だ。女性は化粧品や香水に変化が出そうだが、わたしにはちょっと分からない。

 

 郊外の家に住み、自分の時間が増え、もしかしたら金銭的な余裕も出来たら、好きなものやことにもっとお金をかけるようになるかもしれない。若者の車離れが指摘されてきたが、必要性もあって車への回帰が起こるかもしれない。車は自動で安全なものと自分で運転して楽しいものに分かれる気がする。一人や少人数で出来るスポーツや趣味が人気が出そうだ。プレー費用にもよるがテニスやゴルフも捨てたものではないのかもしれない。楽器演奏も増えそうだ。ピアノよりギターとかフルートとか持ち運びができるものに人気が集まりそうだ。今は廃れつつあるオーディオ機器も復活すると楽しいなあ。囲碁、将棋それから絵画、俳句なども良さそうだ。なんかプレバトみたいだが。

 会社に行かないから社内恋愛や社内不倫も減るだろう。もっともやる人は他でやるようになるかもしれない。

 

 こうした分野が有望といってもそれが株とどう結びつくかはよく分からない。しかもそれは現時点で短期の見立てだ。本当にマーケットの未来を読んで自分の行動を考えたいなら、もっと下の世代を見るべきだろう。わたしの孫は今年小学校に入ったが、なかなか授業が始まらなかったし、その結果夏休みはとても短かった。いつもマスクをしなくてはならないし、友達とあまり話も出来ない。運動会もあるかどうか分からない。まさに新型コロナとともに社会生活を始めて、従来の学校生活とは全く違う世界にいる。それが昔のように戻るかどうかも分からない。わたしと同じ時代に生きているが、まるで違う経験をしているのだ。今後もそうなら彼らの考えや行動はきっと、上の世代(今の小学5,6年生以上)とは違うはずだ。彼らがどう考え、何に興味を持ち、どう行動するかを予測することが、これからのいろんな分野のマーケットで起きることを掴むきっかけになる気がする。わたしなどにはさっぱり分からないが、早晩きっと何かを見つける人が出てくると思う。