日本男子ゴルフツアーの行方

 ゴルフの全米オープンが始まった。ゴルフチャンネルでは気合の全生中継だ。解説陣も楽しく地上波の某チャンネルのつまらなさとはえらい違いだ。4人の日本人プレーヤーは初日を予選通過が期待できるまずまずの線で終えた。ぜひ全員の予選通過を見たい。

 

 米国の男子ゴルフツアー、女子ゴルフツアーはコロナウィルスの影響で数か月のブランクがあったが夏ごろから試合を再開している。無観客でさみしさはあるが、TVで応援出来てわたしたちゴルフファンはハイレベルな戦いを楽しんでいる。日本の女子ゴルフも8月半ば以降いくつかの中止はあるものの、ほぼ予定通りにトーナメントを開催している。今年中の実施トーナメントは14試合くらいになりそうだ。一方日本の男子ゴルフは1月にシンガポールで行われた試合の後ずっと試合がなく、9月初めにフジサンケイクラシックが行われただけだ。その後また試合中止が続き、次は10月15日からの日本オープンだそうだ。そのあとは3試合の予定があるがこれも確定ではないという。最悪の場合日本国内でのトーナメントは2試合になりかねない。

 

 日本の男子トーナメント中止の理由はコロナ感染防止だが、米国でも日本の女子も同じ状況でトーナメントをやっているのを見ると、それだけが中止の理由ではないと思える。コロナのリスクがあっても開催するメリットがあればやるのだから、男子ツアーはリスクをとってまでやるメリットがないということになる。日本のゴルフツアーは企業が主催者となって費用を負担することで成り立っている。ゴルフツアー機構は単なる協力者に過ぎず、試合を管理するのはスポンサー企業と試合を放送するTV局だ。放映料や入場料で賄えない費用はスポンサー企業が払うが、広告宣伝費として落とすから本業で十分な利益があがっていれば大きな問題はない。しかしスポンサー企業の収益が悪化すると経費節減の一環としてトーナメントへの出費をやめることになる。女子ツアーの試合が多く行われるのは、全体の費用が小さいのと、試合の前日に行われるプロアマに顧客企業の幹部を招待して接待になるからそうだ。男子ツアーの選手は女子選手ほど人気がないのだ。

 

 コロナウィルスがいつになれば衰えるか分からないし、企業の収益の回復も時間がかかるようだと男子ツアーが2019年レベル(これだって20年以上前に比べれ大きく縮小している)に戻るのは難しいだろう。このまま衰退してボーリングやプロテニスのようになってしまうかもしれない。プロゴルフの凄さと楽しさを伝えるのをスポンサー企業に全面的に依存する形態から抜け出すことを考えないとダメだと思う。ツアー機構なりゴルフ協会が主体となって生き残る方法を考えるべきだ。米国のようにはいかないかもしれないが、ツアーの魅力を高めて視聴者から試合ごとにまたは一括して視聴料を取ったうえでスポンサーを探すとかしないと現状のままじり貧だ。スターがいないのが一番の問題だから、もっと米国や欧州、アジアのツアーと連携しトーナメントの規模を大きくしてスター選手を呼ぶのだ。ZoZo Championshipのように完全なUSPGAツアーにしなくても準USツアーのような位置づけにしたり、欧州やアジアツアーとは共催にして海外のスター選手が20人くらい参加するようにすれば人気も高まると思う。そのためにはある程度のギャラは払う。日本の選手が海外のツアーに行かなくても世界のトッププロと戦えるし、スポットでメジャーに行っても気後れがしなくなる、そんな環境をつくれればいいと思う。今のプロゴルフツアーの幹部たちにはそんな積極性が感じられない。誰か救世主はいないのか。