プロゴルファーのインタビューへの対応

 ノーザントラスト・オープンが終了しB.ワトソンが同トーナメントで2年ぶりの優勝を飾った。ツアー初優勝を狙うJ.コクラックがリードする中で、B.ワトソン、A.スコット、D.ジョンソン等のメジャー優勝者が追い上げる戦いとなった。16番終了時点でワトソンとコクラックが並び、先に18番をプレーするスコットが1打差で追っていた。
 
 18番でのスコットの第2打は見事な当たりだったがグリーンをオーバーしてラフに入った。これでアダム・スコットの優勝はなくなったなと思って、TVから離れて朝食を食べながら新聞を読んでいると大歓声が聞こえてきた。A.スコットの3打目が外からチップインしたのだ。このバーディでスコットが後の組の2人に追いつき首位に並んだ。しかしそのすぐ後に17番のパー5でB.ワトソンがバーディを取り単独のトップになった。A.スコットは自分のプレー終了後クラブハウスのTVでB.ワトソンの18番のプレーを見ていたが、ワトソンが第2打をバーディーチャンスにつけるのを見るとプレーオフの準備に行くのをやめた。とても面白い戦いだったが今回のテーマはそのことではなく、試合後のインタビューである。

 B.ワトソンが優勝パットを決めたすぐ後に、惜しくも勝ちを逃したA.スコットにレポーターがインタビューした。前年まで使っていた長尺のパターが禁止になったので、普通のパターを使い苦労していたがついに優勝に手が届くかと思ったスコットは明らかに落胆していた。しかし彼はその悔しさを押し隠し、笑顔さえ見せながらレポーターの質問に丁寧に答えていた。人によっては試合に満足して笑みを浮かべているようにも見えただろう。その紳士的な振る舞いと成熟した対応には、見ている方が感心してますますファンになってしまうような雰囲気があった。トッププロの振る舞いのお手本のようだった。

 その後で最終日の爆発が期待されたが上手くプレーが噛み合わず11位タイに終わった松山へのインタビューを録画で流した。松山もボギーが先行してバーディを取り返すとまたボギーがでる展開にもどかしげな口調だったが、ショットはそれほど悪くないらしく、順位はともかくそれなりの内容に納得しているようだった。NHKの現地のディレクターが毎試合付いているのでその人がインタビューしたのだが、相手の顔を見て落ち着いた話し方で受け答えをする態度は好ましかった。特にゴルフの内容についての質問にも、出来るだけ視聴者にも分かるように説明しようとする姿勢が出ていて立派な受け答えが出来るようになったなあと感心した。日本にいる24-5歳の若者でここまできちっとした対応が出来る人はごく一部だろうと思う。特に有名になっているプロスポーツ選手では極めて少ない。

 松山については米国での時間が経つにつれ、対応に大人びた雰囲気が出てきてインタビューの話の内容や態度にもそれを感じていたが、今回のインタビューもまさにそのことを示していた。米国では子供の頃から一人前に扱われ自分の意見を主張することが求められる。勿論日本のように子供らしく育てる事の良さもあるが、若者を見ると総じて日本人は子供っぽく、米国人(実際はヨーロッパやアジアもそうだ)は大人びている。社会性が身についていると言っても良い。松山も日本にいたときはあまり話さないというか、言いたいことをうまく表現するのが苦手のようだったが、米国に来てとても良い方へ進化していると思う。

 何故かと言うと上述したA.スコットなどの態度を目にしているからだと思う。自分よりはるかに上の選手たちが謙虚で誠実な対応をするのを見て学んでいるのだろう。NHKBSの解説をしている田中泰二郎氏が松山のインタビューを見て「悔しいはずなのに穏やかなのはとても調子が良いからでしょう」という内容の事を言っていたが、それもあると思うが本質は松山が成長してることだと思う。日本の一部のマスコミは現地記者とのインタビューに通訳をつけている松山を見てまだ本当の米国PGAの選手になっていないなどと書いているが、とても表面的な見方で松山はゴルフだけではなく人間としても成長しているのが分かっていない。それは今田竜二やテニスの錦織のように話せたら誰だって羨ましいが、彼らは14-5歳から米国で暮らしているのだ。ゴルフの練習で必死の松山に無理な要求をしてはいけないと思う。彼がもう一つ二つ勝ち、メジャーでも活躍する方が先なはずだし、そうなれば松山自身が話さなくてはと思うようになるはずだ。松山の変化はそれを感じさせる。

 翻って日本のゴルフツアーを見ると選手の態度には本当にがっかりしてしまう。某選手などは優勝を逃したあとでのインタビューでずっとインタビュアーを見ずよそを向いて話していた。早く終われという意味なのだろうがいくら悔しくても、いくら自分に腹を立てていても、こんな態度では人間としての質が低いことを示しているようなものだ。藤田、谷口、宮里優作(そのほかにも何人かいる)などはいつもきちっとした対応をするが、多くの選手にはA.スコットの態度から大切なことを学んで欲しいと思う。