どうした!石川遼

 第5のメジャーと呼ばれる’ザ・プレーヤーズ選手権’が終わった。優勝したのはキム・シウーという韓国出身の21歳の選手だ。昨年の’ウインダム選手権’に続く2勝目で、そのポテンシャルの高さには驚かされる。世界にはまだまだ強いゴルファーがいるのだとつくづく思う。松山と池田はともにイーブンパーで22位だった。松山は期待されたた成績は残せなかったが、最終日の上り3ホールをイーグル、バーディ、バーディで上り力の片鱗を見せた。前日のショートホールのミスが痛かったが、普通にやればそのうち勝つだろうと思わせるものがあった。池田は難コースで天候が変わる中我慢強いゴルフをした。精神的に波がある選手という印象だったが、その面での成長を見せ今後の活躍を予感させた。

 一方で先週も大たたきをして最下位に近い成績で予選落ちした石川遼は、ランキングが低いため今週は出場資格がなく、次週のバイロン・ネルソンへの出場が予定されている。そろそろトップ10を続けて取らないと来季のシードは難しい状況だ。(今シーズンは昨年の怪我による救済ルールで出場できている) 最近予選落ちをするたびにインタビューで「ショットが安定しないのが原因だが、良いショットも出ているので練習の成果は少しづつ出ていると思う。もっと練習してショットの精度を上げていきたい」といったコメントを続けている。わたしもその言葉を信じていたが、もう一年近く同じことを聞いているのでさすがにチョットまずいのではと感じざるを得ない。

 石川のそんなコメントを聞くたびに思い出してしまうのは、彼が米国ツアーに参加したころに言っていたことだ。「予選通過を目指して米国に来たわけではない。優勝争いをするために来たのだ。米国で100位くらいで10年シードを取っても意味がない」といった内容だ。今シードすら取れそうもない状況で石川はどう考えているのだろうか。米国PGAでは125位くらいでシードが取れるが、上位でなくても10年間シードを維持することは大変なことだ。優勝争いはシードを維持する中でチャンス生まれてくるもので、シード権を取ることを軽視したらそんなチャンスはまずない。米国PGAのメンバーには簡単に勝つ選手もいるが、大半は実力はあるのになかなか勝てないというケースだ。そんな選手もシードを維持する中で初勝利を手にするのが普通だ。シードを維持する努力と経験を通じて勝つ力や運を掴むのだろう。

 しかし石川遼は今もその時のコメントにこだわっているような気がする。彼が予選落ちを続けてもそのことよりショットの完成度を口にするのは、たとえ低迷していても自分は優勝争いをする力のある選手だから、目先のことにはこだわらないという姿勢を見せていると感じてしまう。勝つために努力しているのであって予選を通るためではないと言いたいようだ。そんなプライドとかこだわりによって挫けそうな自分を支えているのかもしれない。

 わたしはもうそんな考えを捨てて予選を通るゴルフをすべきだと思う。そうやっても本当に予選を通るかは分からないが、少なくとも今の姿勢よりプロゴルファーとしてずっとまともだ。予選を通らなければ優勝争いなど出来ないし、予選を続けて通るようになれば上位に行くチャンスも出てくるからだ。ドライバーの完成度を追求しながらOBを連発するより、フェアウェイウッドやアイアンでティーショットをしたり、パー5はスリーオン狙いをするゴルフをすべきだと思う。日本でスターになった石川は多くのスポンサーがついているので、予選落ちを続けても生活の心配はない。だがその結果プロゴルファーとして満足のいくゴルフをしていない。順位にこだわって頑張る選手たちからは、彼らの努力を冒涜しているようにさえ思われるかもしれない。

 ショットの出来にこだわるより少しでも良いスコアであがるゴルフを目指すべきだ。今の石川の実力は米国PGAで100位など意味がないと言えるレベルではないのだから、アプローチやパットの精度をもっと上げて、しぶとく予選を通るゴルフをすることだ。その過程で長いクラブの精度も上がってくるのではないだろうか。試合で稼げるのが本当のプロゴルファーだろう。石川は今でも松山に次ぐ日本人ゴルファーだ。発想を変えてしぶといゴルファーになる努力を地道に続けていけば、きっと勝つチャンスがやってくる。もうタイガーやマキロイを追っても納得や支持は得られないが、しぶとくて崩れないゴルファーになって勝つことが出来れば、その努力をゴルフファン皆が賞賛するだろう。