松山英樹 米国PGAで2勝目

 今週の木曜日からメルボルン郊外へゴルフと観光をしに行くのでそのことを書こうと思ったが、今朝のNHKBSの放送で松山がウェイスト・マネジメント・フェニックスオープンでツアー2勝目をあげたのを見て急遽予定を変更した。

 試合の展開は3日目終了時点で共に首位と3打差の2位だった松山英樹とリッキー・ファウラーが最終日に優勝争いを演じた。16番ホールを終えてファウラーが14アンダーで松山に2打差をつけた時は正直勝負あったと思った。というのは17番はワンオンも可能なパー4で両者ともバーディの確率が高いし、18番は距離があるパー4でバーディを取れれば御の字でイーグルなどはまず無理なホールだったからだ。要するに残り2ホールで2打差を追いつくのはきわめて難しい状況だったのだ。

 317ヤードほどの17番でファウラーは物凄い当たりのティショットを放った。これが楽々と手前からグリーンに乗ったが止まらず奥まで行き池に落ちてしまった。いかにもファウラーらしいといえばそうなのだが不運といえば不運だった。グリーン手前に第一打を持っていった松山は手堅くバーディをとり、ボギーのファウラーに並んだ。最終ホールを共にバーディとして14アンダーで並んだ両選手はプレーオフへと突入した。

 手に汗を握るプレーオフの4ホール目はまた17番である。レギュラーの試合の17番でドライバーが飛びすぎたファウラーは今度は5番ウッドを手にした。見ていたわたしは却って曲げてしまうのではと感じたが、果たしてボールは左に曲がり池に入った。再びボギーとしたファウラーに対し、確実にパーを取った松山が2勝目を手にした。世界ランク4位のファウラーが短いパー4で2回連続池に入れるなどとは誰も予想しなかっただろう。PGAのホームページの記事は「17番で2度も池に入れたファウラーは松山に予期せぬ勝利を与えた」と書いてあるが、まったくその通りだった。だからといって松山の勝利がラッキーだったというのではない。松山はラッキーを勝利に結びつける力と勝負強さを持っていた。まさに堂々たる勝利だった。

 レギュラーの18番からプレーオフの3番目までは見ていて苦しくなるような厳しい戦いだった。特にレギュラーの18番は先にセカンドショットを打った松山のボールはピンの上5.5メートル(18フィート)に乗り、ファウラーのボールは3メートル(10フィート)に乗った。ボールがピンの真上で近いファウラーに対し、斜め上で5メートル以上のパットになる松山は明らかに不利な状況だった。松山はこの下りのバーディパットを真ん中から入れ、逆にファウラーにプレッシャーを与えた。ファウラーもこれを入れてバーディーとしてプレーオフに入ったのだ。松山はこのパットを「これまでで最高のパットだった」と語ったという。

 プレーオフもピンチとチャンスが入れ替わるようなハラハラする展開になった。先のPGAのホームページの見出しは'Matsuyama defeats Fowler in epic playoff'となっている。epicとは叙事詩のことだ。英雄が活躍する壮大な物語のようなプレーオフだったというのだろう。全く上手い事を言うものだと思うが本当にそんな戦いだったのだ。またPGAの記事で松山に対してよく使われているのはclutchという言葉だ。ピンチに強いとかしぶといとかいう意味だが、確かに松山は連続するピンチをしのいで勝利した。彼の米国PGAでの初勝利がメモリアルでケビン・ナにプレーオフで勝ったことを考えると、彼には技術や体力に加えてプロのスポーツ選手に必要な勝負強さが備わっているように感じる。ニクラウスが言ってように松山の物語はまだ始まったばかりなのかもしれない。これからの一層の活躍に期待しよう。