メジャー勝利への道;テニスとゴルフ

 錦織の全豪オープンが終わった。今年は初戦から好調だったので準々決勝のジョコビッチ戦も期待してみていたが完敗に終わった。完敗の理由は専門家が分析をすると思うが、素人が見ても力の差ははっきりしていた。錦織の力はランクが示すように世界で5〜7番目にいるのだろうが、ジョコビッチとは大きな差があるのは明白だし、次のマレーやフェデラーともかなり差があると思う。2014年の全米オープンのことがあるからメジャー制覇はないとは言えないものの、実力通りの戦いになると現時点で錦織がメジャーに勝つ可能性は小さいと言うのが妥当だろう。マスコミは今年こそメジャー制覇と騒ぎまくるが、もう少し冷静な姿勢で報道をすべきだし、錦織もそのほうがやりやすいのではないかと思う。

わたしのような素人から見ても錦織が四大大会で勝つにはいろんな条件が重ならないと無理なように思える。例えば、錦織の肉体的・精神的な状態がベストでテニスの調子も過去にないくらい良い、そしてランキング上位の3人のうち2人くらいが不調で、さらに組み合わせにも恵まれるといった具合だ。もっとも組み合わせに恵まれるといっても、決勝に行くまではこの三人の誰かには勝たなくていけないだろうから実力で勝ち抜く力が必要なのは当然だ。2014年の全米オープン決勝で錦織に勝ちチャンピオンになったチリッチは運と好調さが結合した良い例だと思う。(チリッチのワールドランキングは現時点で13位だ) だからわたし達ファンは、過剰な期待を持たずに応援するくらいが良いのではないだろうか。

 メジャー制覇というとゴルフの松山にも期待が掛かっている。今日から始まったファーマーズ・インシュランス・オープンが彼の2016年初戦となるが、一日目を8位とし順調なスタートを切っている。よくある質問は錦織と松山はどちらが先にメジャーに勝つかというものだ。競技が違うのだから質問としてはおかしいという意見もあるが、世界に通用する日本人のプロスポーツ選手としての二人を応援する気持ちからこうした質問になるのは理解できる。松山の世界ランキングは17位でその意味では錦織の方がだいぶ上だが、メジャーでの勝利という点では松山のほうが先ではないかという見方がある。その理由としては以下のようなことが言われている。

 テニスは1対1の戦いだから結果はほぼ実力通りとなる。先にあげたように錦織と少なくとも上位3人とはかなりの差があるから、実力者全員が顔を揃えるテニスのメジャー大会で勝つのはとても難しい。一方でゴルフは1対1で戦うのではない上に(マッチプレーという戦い方もあるがメジャーでは採用されていない)、結果に運の要素が加わる程度がテニスに比べて大きいので、あるひとつの試合という点では必ずしもランキング通りの結果になるわけではない。だからどちらもメジャーに勝つのは非常に厳しいが、まだゴルフの松山の方がかつ可能性は高いというわけだ。

 また松山の世界ランキングは現在17位だが、もう1勝すれば10以内に来るだろうしその可能性は高い。帝王ニクラウスが認めたように松山のポテンシャルはいずれベスト5に入るくらいのものだということも彼にかかる期待が大きい理由だ。わたしはこうした見方は一理あると思っている。例えば今年メジャーに勝つ可能性はと考えると、上述の理由で錦織より松山のほうが大きいと感じる。しかしだから勝てると言っているのではなく、松山が勝つのも簡単ではないのは明らかだ。

 先にあげたゴルフの特性、運に左右される要素がテニスに比べて大きいことは、松山が勝つ可能性を高めてはいるが同様に他のゴルファーが勝つ可能性も示唆している。だからゴルフの場合一つの試合の勝ち負けを考えた時、勝つ可能性のある選手の範囲が広がり競争が厳しくなる。テニスだと運や調子の波を考えても、メジャーで勝つのはランキング15位以内くらいだと思うが、ゴルフの場合50位とか100位くらいでも勝つ可能性のある選手はいると思う。何年か前にメジャーで勝ったが最近不調でランクを落としている選手はかなりいる。彼らが調子を戻せば現在のランクに関係なく勝つ力を持っていると言える。タイガー・ウッズフィル・ミケルソンなどはその例だし、ほかにもまだこうした選手はいる。こうした事を考えると松山の方が錦織よりメジャーで勝つ可能性が高いなどとは言えなくなる。

 一言で言えばそれほどメジャーで勝つのは大変だし、運も味方にしないと難しいということだ。ジョコビッチやゴルフのスピースやマキロイのような天才的な選手なら別だが、そうでない場合は世界で一流のレベルでもなかなか勝つことはできないのだろう。だから価値があるのだと思う。いずれにしろ真面目にメジャーで勝てるかどうか議論する対象となる日本人選手がいることはファンとしてとても嬉しいことだ。錦織と松山のこれからの健闘をバカ騒ぎせずに応援しよう。