2014年の株価予想のレビューと教訓

 昨年7月の当ブログで週刊ダイヤモンド2月8日号の特集記事「買っていい株220、買ってはいけない株80」について、その後の動き(7月時点)をチェックしたが、今回は年末時点でどうだったかを見てみよう。1年間の総まとめなので単に当たり外れの度合いを評価するだけではなく、今年の株式投資に生かされるものがあるかということも考えてみたい。

 その特集記事は三つのパートからなり、1)買っていい株220、2)が買ってはいけない株80」、3)がマーケットはどうなる?である。買っていい株220は11カテゴリーに分けられているが、その中で’隠れた割安株19’、’成長期待の株21’、’アベノミクスで上ブレ期待の株12’の52株を選んでチェックした。11カテゴリーの中でこの3つのカテゴリーの定義が比較的妥当または面白いと考えたからで昨年の7月も同じ株で評価した。

 個別の株価を見る前に日経平均の変化に触れておこう。この雑誌が基準とした株価は2014年1月22日時点のものなので、日経平均も同じように比較してみる。1月22日の日経平均は15,820円で年末が17,451円だから10.3%の上昇だ。手持ちのポートフォリオが10.3%の上昇なら日経平均並だし、それを上回れば良い実績だということになる。いくつかの株の組み合わせの結果ならこうした比較が出来るが、個別の株価の場合単純に日経平均の上昇率と比較するのが良いかは難しいところだ。とりあえず日経平均の上昇率の半分を目安として、個別の株価が5%以上高くなっていたら上昇、0から5%を横ばい、マイナスを下落とした。これで結果を評価したのが下の表である。
            上昇   下落   横ばい

  • 隠れた割安株19    6    11    2 
  • 成長期待株 21    14    4    3
  • アベノミクス株12    2    9    1 
  • 合計    52    22    24    6        

上記の合計で分かるように、上昇と下落がそれぞれ22と24でほぼ同数だ。この雑誌が勧めた買っても良い株を52買っても、日経平均ほども稼げなかったのではないだろうか?これなら自分が好きな(またはよく知っている)株で上がりそうな気がするモノを買っても変わらなかったかもっと良い結果になったかもしれない。だがこれは合計での話で、カテゴリーごとに見ると違いがはっきりする。

 隠れた割安株のカテゴリーで上昇は6で32%なのに下落は58%だ。アベノミクスで上ブレ期待の株にいたっては上昇は17%で下落は75%という恐ろしい結果となっている。一方、成長期待の株では21の内の14、67%が上昇で下落は19%だ。成長期待の株カテゴリーの実績は他の二つとは明らかに違う。

 成長期待の株カテゴリーの定義はROE(株主資本利益率)の高い企業となっている。これを基本にして自己資本比率50%以上、3期連続増益、PER20倍以下という縛りをかけている。要するに利益性が高く、財務的な基盤があり、買われ過ぎていないという株だ。確かにこのカテゴリーの企業なら株式市場が活性化する中で株価が上がっていく気がする。

 一方で割安株カテゴリーの定義は株価収益率(PER)と株価キャッシュフロー比率(PCFR)で割安と判断した企業ということだ。共に現在の株価と税引き後利益、そして営業キャッシュフローの倍率を見たものである。税引き後利益は必ずしも現金の流入の大きさを保証していないので、同時にキャッシュフロー(現金の流入)を評価の基準としたのだろう。これも3期連続の増益、PERが10倍以下という縛りをかけている。PERの目安は15倍と言われているので、10倍以下というのは確かに割安とも言える。しかし3期連続増益でPERが10倍以下というのは逆に何か問題があるのではと感じさせる。成長期待の株のカテゴリーのようにROEのチェックなどもする必要があるだろう。このカテゴリーの株が上述したようにあまり上がっていないとしたら、株価収益率と株価キャッシュフロー倍率だけで割安かどうか判断するのはリスクが高いと言えるだろう。

 アベノミクスで上ブレ期待株のカテゴリーはさらに3つのセグメントに別れそのセグメントごとに4つの株が選ばれている。そのセグメントとはオリンピック、TPP、成長戦略である。上記の二つのカテゴリーのように明確な数字的な定義があるわけではない。単なるムードと言って良いかも知れない。アベノミクスの第三の矢がまだ効果を上げていないというか、放たれていない状況ではこの結果も当然なのかもしれない。要するにムードだけで株価を選んではいけないと言うことだろう。

 また買ってはいけない株として、割高で下ブレ懸念の株60の内、上位30社を選んで株価をチェックした。このカテゴリーの定義は株価が市場の動きの1.5倍の大きさで動く、またPERが30倍か赤字で算出できない、ROEが5%以下となっている。このカテゴリーの30社の株価の動きは以下のとおりである。
            上昇    下落  横ばい
買ってはいけない株30   12    17    1
上昇が40%、下落が57%、横ばいが3%である。上記の買っていい株の隠れた割安株やアベノミクス株の結果より良いのだから驚きだ。これが買ってはいけない株の結果である。

 以上を見てみると雑誌や専門家がもっともらしい理屈をつけて選んだ株などまるで信用できないことがわかるだろう。株が上がると思って株式投資をしようとする人はこのことをよく考えたほうがいい。仮に専門家や雑誌の意見を参考にするなら、その意見なり分析に自分なりの分析を加えることだ。上記の例でその重要性がよくわかると思う。そんな難しいことはできないというなら、日経平均に含まれる企業をいくつか業種等を分散して選ぶのが良いだろう。または株などはしないことだ。

 最後に6人のストラテジストが予測した2014年の高値を見てみよう。高い順に何月かを入れて示すと2万500円(5月)、1万9000円(12月)、1万8250円(12月)、1万8000千円が3人(12月が二人と4月が一人)となる。終値でなければ12月に1万8000円に達したことがあったから、当たったか近かった人が3人いた事になる。まあ上げ相場の時はあたりやすいとも言える。総じて強気か楽観的なのはいつものことだ。

 これからこうした特集が増えてくると思うが我々はそれに踊らされないようにしたい。もっともある程度踊らないと儲からないもの事実だが。2万円に行くなどという景気のいい話も多く、わたしもそれはありえないことではないと思っているが、多分2万円までは我慢できないと思う。そのどこかで処分するはずだ。ある程度利益があがったら良いと考えないと株などできないからだ。