三菱UFJFGの株価は妥当か?

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の2014年度3月決算が来週発表されるが、その内容いかんでは株価が多少動くかもしれない。しかし先週末(5月2日)の同社の株価566円は、その収益力と財務体質から見ると安すぎるのではないか。多少株価が動いてもこの傾向は変わらないだろう。2014年3月末の同社の予想利益は税引き後で9100億円で、一株あたりの利益は65.7円である。

 この予想利益と先週末の株価から計算すると、PER(株価収益率)は8.61、PBR(株価純資産倍率)は0.66となる。一方で配当額は14円なので配当利回りは2.47%となり、これだけ見ると悪くはないじゃないかという感じもするが、PERとPBRの値は妥当とは言えないと思う。

 PBRは株価と一株当たりの純資産額の割合を示しているから、1.0であれば株価は純資産と同額であり、よく言われる会社の解散価値と等しいことになり、その株価が妥当であることを示していると言われる。もっとも純資産といってもその実際の価値が簿価と同等かどうか分からないから、単純に1.0になるはずだとは言えないのかもしれない。実際の資産の内容を考慮してそれに見合った株価になっているケースもあるだろう。

 しかし今議論しているのは三菱UFJFGだ。メガバンクのトップであり、日本を代表する企業である。そこの資産が簿価より大幅に毀損しているなどとは考えにくい。やはり0.66は低すぎだろう。一般に日本の銀行のPBRは低いと言われているが何を根拠にそうなっているのか? メガバンクが低くしているためにそう言われているのではと考えるのはおかしいだろうか? 

 またPERは15倍程度が適正だと言われてきた。これも明確な理論的根拠があるのかどうかわからないが、これだけの優良企業が10倍以下というのはやはりおかしい。現在でも日本の優良企業は12倍から15倍くらいが多い。MUFGのPBRとPERが何故こんなに低いかというと経営陣が意図的にそうしようとしているからだろう。堅実で安定的な経営をするという口実で物言わぬ大人しい株主をないがしろにしているとも言える。下記に述べるように適正なレベルに持っていく方法はあるし、そうすることで日本の企業の経営が海外の一流企業と同じ考え方で行われていると判断され、その結果MUFGのみならず日本の上場企業及び金融マーケットの国際的な信用を高めることにつながると思う。

 ではどうすべきなのか? それは配当を増やすことである。前述のように現在の配当は14円で利益の21%である。配当性向が20%というのは日本の一流企業では平均的だが、海外の企業に比べると低いと言われている。米国では約30%が平均的だ。これを見ても日本では株主への利益の還元が低いことが明らかだ。MUFGが配当性向を30%にすると一株当たりの配当額は19.7円になる。5.7円の増加で総額では約800億円の増額だが、前述のように現時点での利益予測は9100億円で十分に対応可能な額であるし、これをやったからといって堅実で安定的な経営が出来なくなる額ではない。

 その結果どうなるのだろうか? 間違いなく株価が上がる。仮にPBRが1.0、PERが15倍に近づくとすると、PBRが1.0になるには株価が今より50%上がらなくてはならないし、PERが15になるには70%上がる必要がある。低い方の50%をとると、株価は849円となる。このレベルでPERは12.9、配当利回りは2.32%とまったく妥当な水準である。こうなればMUFGは国際的に見ても妥当な株価を維持する一流企業とみなされるだろう。

 問題は誰がこれを主張し、経営陣に要求するかだ。こうした会社はまだ強固な株の持ち合いをして仲間の企業と共に防衛体制を作っているから我々個人株主の力でやるのは難しい。マスコミを使う手もあるが、マスコミもMUFGに戦いを挑もうという勇気など持っていないのが大半で、まず期待できない。そうなるとやはり外圧頼りということで、米国の投資家とか年金基金とかに大株主になってもらい会社の考え方や行動を変えて、もっと株主重視の経営をしてもらうしかない。誰でもいいからそうした投資家に話をつけてもらいたいものだ。結果としてそれは日本のためになるはずだからである。