2013年マスターズゴルフと石川遼

 今年もまたマスターズが始まった。今日で三日目を終えて石川遼は8オーバー、56位タイ、決勝に残った選手ではびりから四番目である。藤田寛之は最下位で予選落ちで、肋骨の疲労骨折という不運もあったが、日本の男子ゴルフ界のレベルを示しているといえる。

 もっとも石川の成績、まだ三日目だが、これについてはそれほど卑下するものではないと思う。あのフィル・ミケルソンが同じく8オーバーだし、ローリー・マキロイは5オーバーで44位、その他イメルマン、カイマー、ビヨーンなどの世界のトップ選手達が5オーバー、6オ−バーなのだから。要するに一流選手でも少し調子が悪いとか、攻め方を間違えるとここまでスコアを崩してしまうほど難しいのだと思う。今年からUSPGAツアーに参加した石川はこれまでほとんどが予選落ちなのだから、マスターズで決勝に残っただけでもよくやったというべきだろう。

 石川遼についてはこのブログでも何度も取り上げてきた。昨年の2月にも石川の海外挑戦への考え方を紹介し疑問を呈した。そのころ石川はおおよそ次のようなことを朝日新聞に書いて(または話して)いた。

 ’今日本で70%、海外で30%の比率で試合に出ているが、このやり方でも海外の大きな大会で優勝争いができることを示したい。日本選手が海外で活躍できないのは、試合の雰囲気に慣れていないとかコースが難しいとか言われているが、高い技術があれば関係ない。今のやり方でも海外で優勝争いができることを後に続く選手たちに見せたいと思う’

 今のアメリカでの成績ではシード権すらとれそうもない石川を見て、これを読むと感慨深い。自信満々というか世間知らずというか思慮が足りないというか、やや気恥ずかしくさえ感じる。しかしわたしは石川を非難しているのではなく、やっと本来歩まねばならない道を進んでいることを支持し、応援しているのだ。

 昨年のブログでは、上記のような戦略を話した石川に、青木、尾崎、中島の時代ならいざ知らず、今そんな選択はないだろうと書いた。そのやり方でも運が良ければ海外で勝つことがないとは言えないが、それで彼が海外の一流プロに肩を並べたとは言えないはずだ。USPGAかヨーロッパツアーでのランキングで上位に入るようになって初めて一流のインターナショナル・プレーヤーになれるのだと書いた。

 そして今石川はアメリカをベースにして、試合で結果を出せず苦労している。ラウンド後のインタビューでも前向きで、心は折れていないことを示すコメントを言うものの顔つきは晴れない。でもそれでいいのだと思う。昨年のようなコメントを言っていたら世界からどんどん取り残されていくのだから。体力、精神力、才能を含め石川がタイガー・ウッズと同じくらいの選手などとはもう誰も考えていないだろう。これから石川がどれだけ成長しても、USPGAで70勝も勝ち、メジャーで10勝以上も勝つなんて考えられない。おそらくツアーで5勝出来れば大成功だ。今は予選通るのも難しいのだから。

 5勝も勝てないかもしれないが、それでも今石川がやっていることは正しい挑戦だ。素人が見ても、石川と世界の一流のプレーヤーとでは技術の差が歴然だ。ドライバー、アイアン、パターすべてに精度が違う。確かに昨年石川が言ったように、高い技術があれば世界でも通用するのだが、その高い技術を日本で身につけるのはほとんど不可能なようだ。強い選手と難しいコースがあるところで戦わないと身につかないものだと感じる。おそらく石川もそのことを身をもって感じているのだと思う。だから予選落ちが続いても前向きなコメントを言い続けていられるのだろう。

 愚かなマスコミもあまりもてはやすのをやめて冷静な報道をすべきだろう。どう贔屓目に考えても、石川の今の実力が世界の100位以内にいるとは思えないのだから。石川遼にはぜひくじけずに頑張ってほしい。また松山英樹も出来るだけ早くアメリカに行って力をつけてほしいと思う。