この2か月間になにが・・・(2)

 前回の最後に書いたように今回は楽しい話題から始める。MVPの大谷翔平については8月26日の当ブログで書いたように、わたしが勝手に思いえがく夢がある。その夢は(実現しそうもないものだが)まだ10年くらい先のことだ。それまではMLBのスター選手としての大谷の活躍を見てゆくことになる。インタビューで大谷は来季は今年以上の成績をあげたいと自信ある表情で語っていたので、どんな成績になるか本当に楽しみだ。投打で既定の回数を超えて、両部門で何かタイトルをとれたら凄いと思う。

 ビッグボスこと新庄剛志監督は毀誉褒貶が半ばするだろうが、これだけの注目をあげながら期待に応えていこうという姿勢はプロ選手として秀逸だ。派手なふるまいはそれとして意外に常識的なところがあるので、試合になるとオーソドックスな戦術をとるような気がする。彼に期待するのは次のスターの育成だ。燻っている清宮をはじめ才能のある若手を見出し、一流選手に鍛え上げて欲しい。

 ヤクルトとオリックス日本シリーズはヤクルトの3勝2敗で神戸に戻ることになった。毎試合緊迫した接戦で、地味だが実力のあるチーム同士の好ゲームとなっている。この2チームの戦いとなって良かったとしみじみ思うが、そもそもクライマックス・シリーズとは何なのかと考えざるを得ない。もういい加減に止めるべき愚かしい制度だ。

 真鍋淑郎氏のノーベル物理学賞で、あらためて多くの日本人研究者が海外で研究を続けていることを教えられた。真鍋氏が米国籍を有していることをもって頭脳流出ととらえる人も多いが、そうしたことを気にせずにどんどん将来性のある研究者を海外に送るべきだと思う。やる気のある人ほど前例のない特異な研究をするが、そういう人は中々日本の一流大学では力を発揮できないからだ。色んなしがらみが多すぎるのだ。閉鎖性の高い日本の大学の変化は非常にゆっくりしている。それならば優秀な人たちをどんどん海外に出すことで、もぬけの殻になった日本の大学の変化を促すしかないように感じる。

 

 この2ヶ月の出来事に関する感想を書いたが、わたし自身は体の調子のこともあって家で過ごすことが大半だった。背中痛でギターが弾けないとなると本を読むくらいしかすることはない。ミステリーは姫川玲子シリーズが少し飽きたので海外モノを選んでみた。アンソニーホロヴィッツの「ヨルガオ殺人事件」、リー・チャイルドの「宿敵」はどちらも面白かった。両方ともかなり長い小説だが、短い期間の出来事を詳細に語りながら、過去の経緯なども組み込んで読者を飽きさせない。こうした骨太のミステリーはやはり海外モノがいいなあと思う。読んで損のない作品だ。

 新書も何冊か読んだが、「立花隆の最終講義」が抜群に面白かった。知的刺激にあふれた講義で確かに’知の巨人’と言われたのも分かる。立花氏が70歳になった2010年に東大生に行った6時間の講義をまとめたものだ。冒頭で立花氏は70歳になり死を身近に感じるようになると、それまでとは違う心境になり若い人たちに何か話しておこうと思ったと言っている。氏は今年80歳で死去したが、このような知性にあふれた人でも、わたしたちと同じように死を意識すると新たな心境になるのだと興味深かった。内容は多岐にわたって深く、立花氏が知性と好奇心の塊の人だったと感じさせる。大谷翔平と同じ時代を生きているのが何か嬉しいように、こうした凄い知性の人の著作を同時代で読んでこれたことがとても幸運に思う。