ゴルフの中継放送

 ゴルフ中継というのはスポーツ放送の中でも特殊だと思う。まずテレビ中継はあるがラジオ中継はない。野球もサッカーもマラソンさえあるのにゴルフのラジオ中継というのはない。ゴルフが動きのゆったりした競技であること、相手と直接戦うのではないことなどからラジオの中継には向かないのだろう。しかしオリンピックの放送などでは、あまりラジオ向きではない競技も中継されたりするので、ゴルフが採用される2016年のオリンピックではラジオ中継があるかもしれない。

 今日のテーマはラジオではなくテレビ中継で、テレビのゴルフ・トーナメント中継もスポーツ放送としては特殊だということだ。日本のゴルフ・トーナメント中継のほとんどは実況中継ではなくその日の競技をビデオで編集したものを流している。四日間競技の三日目や、三日間競技の二日目などでは生の放送もあるが、優勝が決まる最終日の放送はほとんどが編集されたもので、これをゴルフ中継として放送している。

 例外はNHKが日本のメジャートーナメントを放送するときで、これは生中継なので臨場感やドキドキ感が違う。スポンサーへの気兼ねがいらず、時間が伸びても対応可能なNHKだからできるのだろうが、前述したような民放のゴルフ中継は日曜の夕方に最終日の競技を編集したものを流す。その日に行われたものを編集して放送するのだから、早くてもこの時間にならざるを得ないのだが、その時点ではほとんどの場合結果が出ている。インターネットなどで結果を見てしまうと放送への興味を失ってしまう。だからテレビ局もインターネットのスポーツ速報などに依頼して(圧力をかけて)、選手のスコアや順位を示すリーダーズボードをアップデートしないようにしている。それでも結果を流すところはあるから、テレビ局に気を使ってテレビのゴルフ放送が終わるまで最新情報を流さないようにしているネットのスポーツ速報などは、まるで間抜けな感じがしてしまうし、テレビの放送も迫力がなくなる。

 もっともこれは日本だけのことでアメリカやヨーロッパのPGAツアーは生放送で、それを日本でも見ることが出来る。これは海外の放送が偉いのでも何でもなく、日本の放送がおかしいのだ。スポーツは筋書きのないドラマだと言われるが、何が起こるかわからないから興味がわくので、実況放送以外のものを中継放送として流すのはいろんな理由や制約があるとしても詐欺のようなものだ。少なくともこれを変えようと思ってこなかったテレビ局は怠慢と言われても仕方ないと思う。

 しかし今日(4月6日)に放送されたヤマハ・レディースというトーナメントは本当の生中継だった。朝の9時から午後1時まではCSで放送し、1時から4時はBSで放送した。静岡県での競技だから朝のうちに雨が少し降りはじめ、午後に本降りになる天候の変化もわかり、選手がその状況にどう対応するかも伝わってきてとても興味深い放送だった。これまでも午前中だけはCSでの生中継はあったが、午後は地上波で編集したものを見せるのが普通だっただけに、画期的な試みだと思う。私は留守番で、かつ天気も悪かったので、仕事を片付けようという予定をすぐ変更して1日テレビを見ていた。それでも飽きないくらいおもしろかったのだ。

 デジタル放送になり、CSやBSが当たり前になっているのだから、スポーツ放送も生の完全中継を手ってしてほしい。かつて9時半で中継終了になって、非難ごうごうだったテレビの野球放送も今は完全放送が当たり前になっているし、巨人の試合だけでなく、ほとんど全試合がテレビで見れるようになった。こうした進歩というか改善はファンを増やすためにも効果的だと思う。ゴルフ中継も今後ぜひ今回のヤマハ・レディスのやり方が主流になってほしいと思う。

 明日の最終日もやはり完全放送とのことなので、とれも楽しみだ。ゴルフファンはぜひ見てください。ヤマハには義理も何もないゴルフファンだがこの放送はおすすめしたい。