ITの進歩にはくたびれる

 外資系の企業で長く働いたので日本企業にいた人よりインフォメーション・テクノロジーへの対応は早く、また進んでいたと思う。わたしは情報システムに特に興味があるわけではなかったが、会社の環境が進んでいたことの恩恵を受けたというわけだ。

 1985年のころには日本法人の東京本社では一人に一台の端末が与えられていた。もちろん今のようなクライアント・サーバーではなくメイン・フレームコンピューターにぶら下がった形で、電子メールもIBMのPROFSというやつで、メインフレームを介在してやり取りをしていた。今のようなメールシステムになったのは1990年代の前半で、その頃営業部門から情報システムに移ったわたしは、これからはクライアント・サーバーの時代ですというスタッフの説明を途方に暮れた気持ちで聞いたものだった。

 そういう環境にいたから、今でもPCは離せない。事務所でも一日中PCに向かっている。インターネットで株取引をし、メールのやり取りをし、エクセルで出納長に入力し、授業や講演の資料はパワーポイントで作る。会社時代はPCのトラブルに遭遇すると秘書か情報システムのサポートスタッフが助けてくれたが、今はすべて自力でやらなくてはならない。時間がかかることも多いが、一人でなんとかやっている。外資系企業だとこうしたことが、部長や役員の最低限のリテラシーということなのだ。


 しかし最近のIT技術、特にインターネット関連技術の速い展開には驚き、おののくばかりだ。元々便利に使えればよいといった態度なので、特に新しいものにも興味がない。作家の林真理子氏が旧来型の真中で折れる携帯を使っているのが恥ずかしいと書いていたのを読み、驚いた位だ。林氏は電車でみなスマートフォンの画面を指で飛ばしているのに、旧態依然に携帯のボタンを押していると情けなくなるそうだが、わたしなどは別にいいじゃないかという気持ちだ。もっともこの話を妻にしたら彼女も全く同じ気持ちを持っていると言っていたのでまた驚いた。スマートフォンを持つのはまるでルイ・ヴィトンを持つようなものなのかもしれない。スマートフォンは携帯メールでの入力がやりにくそうなので、妻はまだ旧来のものを使っているらしいが、この辺の使い勝手もわたしにはよく分からない。


 そんなわたしでも興味を持っているものはある。ipadまたはipad miniである。海外に旅行する際に株価とメールのチェックだけは欠かさないようにしているからだ。これまでは小さなモバイルPCを持っていってたのだが、パックツアーのように次から次へ場所を変わる旅行の場合は軽くて小さいほど良いので、そろそろ新しいものをという気持ちがあるのだ。同じところに2−3週間いる場合は今のPCで十分だ。 娘がいつもipadを持っていて、たまに我が家に帰ってくる時も持ってくるが、楽しそうだが結構大きいし、なによりもソフトバンクの携帯ネットワークからインターネットにアクセスしているという説明を聞いて(多分そういったと記憶しています)、追加の費用がかかるのが気に入らない。

 わたしの娘のようにプライベートはすべてipadでコミュニケーションを行うのなら良いが、わたしの場合は旅行の時だけで、普段はモバイルである必要なんかない。今家と事務所にあるPCはそのまま使用して、追加でipadipad miniを買いソフトバンクと契約するのは無駄な出費のような気がするのだが、このあたりが良く分からない。

 今のモバイルPCなら宿泊先でIDとパスワードをもらい(または買い)部屋からホテルのサーバーを通してインターネットに接続できる。これと同じことはipadでもできるのだと思うが、その場合でもソフトバンクとの契約の必要はあるのかどうか分からない。インターネットで調べてみても、わたしの質問が不明確なのか、こんなプリミティブなことを聞くやつはいないのか分からないが、もう一つはっきりしないのだ。近い内にヨドバシカメラでも行ってこようかと考えているが、そこで説明を聞いてもしっくりこないのではと思うとテンションも下がってしまう。

 便利になるのも良いがあまりに進歩が速いと年寄りにはついていきにくいとつくずく思う。