Playboy誌を読む (1)

 サンフランシスコの空港で'Playboy'を買った。一緒に行った仲間が'それは見つかると没収されるのか'とたずねたが、良く分からないと答えた。彼の質問はこの雑誌が所謂ポルノグラフィーで、日本への持ち込みが禁じられているとの考えに基づいているのだろう。その点についての国の判断は知らないが、雑誌から受けた私の印象は以下のようなものだ。

 プレイボーイだからプレイメイトが出ているのは当然だ。しかしその写真はとてもソフトで美しいもので、ポルノグラフィーとはとても言えない。日本の一般週刊誌、「週刊現代」や「週刊ポスト」に掲載されている写真の方が、はるかに過激で猥褻感がある。これの日本持ち込みを禁止するなら、'現代'や'ポスト'を持っていたら没収しなくてはいけないということになってしまう。日本の税関はここの辺りをどう判断してるのだろうか?今になると、税関で聞いてみればよかったと思う。

 多分ライバル誌である'Penthouse'の方はもう少し過激で、'現代'や'ポスト'にも負けないとは思うが、思えば日本の普通の週刊誌が、本場のプレイボーイより過激になっているとは、時代が変わったというか、日本の規制のなし崩し的緩和が進んだというか、これでいいのかという気持ちさえする。

 記事も中々面白いもので、 トム・クルーズへのインタビューとアメリカのバブル崩壊を予言した異端の経済学者達の記事などはとても興味深く読んだ。要するに写真だけではなく内容でも、前期の二つ日本の週刊誌より格調が高いという印象を持ったのである。この二つの記事について少し紹介しよう。

 トム・クルーズへのインタビューは彼の少年時代の生活や、それが今の考え方、生き方にどんな影響を与えているかが中心となっている。トムもこうした質問には慣れているのだろうが、それなりに率直に語っているようで面白く読める。彼のファンには目新しいこともない話なのかもしれないが、彼のことに特に興味のなかった私には、トム・クルーズが経済的に極めて厳しい少年時代を送ったことなど知らなかったので、少し驚かされるような内容だった。彼の今のライフスタイルは明らかにこうした少年時代の経験からきていることを本人が認めている。一言でいえば、腹が据わっていて、人に何か言われてもたじろがない信念があるようだ。

 彼の言動についてマスコミ等が色々な解説や批判をすることについても、彼は事実と推測は一致しているわけではないので気にしないが、何か言われることについての責任はとるし、自分に出来るのは自分が正しいと思うことをやり続けるだけだと明言している。そう考えるようになったのは成熟したからか?という質問に対してこう答えている。

 「それは私がいつも感じてきたものだ。子供時代に新しい学校へ行った時のことを思い出す。(彼は家庭の事情で頻繁に学校を変わったそうだ) 転校した最初の日に必ず誰かやってきて、わたしをロッカーに叩きつけようとする。わたしは喧嘩をしようとは思わなかったが、実際それは起こるのだ。自分の身は自分で守らなければならない。相手がでかいとか卑劣だとかは気にしないが、対決せずに彼等にやりたいようにさせていたら、いろんな形でやられてしまう。子供だったが厳しい教訓を学んだ。今はそれとは違う。もっと大変だ。私は世界中からみられているのだから・・・」 スタントマンを使わずに様々な冒険シーンをとる彼の生き方には、こうした過去により身に付けた強い精神力があるように感じた。
 
 最後に彼はこうも語っている。「わたしが人生で信じるものは、どのようにしたらもっと上手くやれるか、それはもっと立派な男になろうとか、もっと良い父親になろうとか、自分自身を改善する方法を見出そうとか何でも良いのだが、それを捜し求めるということだ。人は自分にとって真実で事実だと思うことを選び、決めていかなくてはならない。わたしは色々な役を演じたり、世界中を旅して色々な人達に会って学び成長してゆく。肌の色は違い、信じるものは異なっていても、わたしが様々な国の人達から事実として感じるのは、人の生き方における共通点だ。わたしは将来そして人生を次のようにとらえる。つまりどんなに厳しいことがおこりそうでも、やみくもに突き進まずに、一歩下がってそれを理解しようとする。それがわたしにとって捜し求めるということだ」

 長いインタビューなので要点をはしょって書いたが、大変印象的な言葉だ。日本の俳優で、ハンサムなトップスターで、こんな話が出来る人がどれだけいるだろうか。尚この記事は(他もそうだが)途中でページが飛ぶスタイルで懐かしく感じた。集英社Playboyの日本版(翻訳記事と日本独自の記事が混じっていた)を出していて、若いころは時々買って読んだが、何年か前に廃刊になってしまった。出版不況なのだろうが本家が頑張っているのだから、また復活して欲しいものだ。

 異端の経済学者の記事は次回に描きたいと思う。