ゴルフクラブメーカーの再編 (1)

 マミヤOPと言う会社のことを調べていた。東証2部上場のこの会社は、マミヤブランドのカメラを作っていた老舗メーカーで、その後はオリンピックと合併して釣り具の製造も行っていた。それらの事業は売却、撤退して、現在はパチンコの玉貸機製造とそれに関連した電子機器ビジネスが主体だ。この会社がもう一つの柱として育てようとしているのがゴルフ事業で、既にゴルフシャフトの分野では、特にアメリカでは一流のプロが使用し、それなりの地位を得ている。最近この会社がキャスコと言うゴルフ用品メーカーを買収した。キャスコは四国に本社を持ち、高品質のゴルフグローブで有名になり、その後ボール、ゴルフクラブの製造も手掛けるようになった。特にキャスコのユーティリティクラブはその打ち易さで一世を風靡した。現在もキャスコブランドで商品が販売されているので、一般の人はマミヤOPの子会社になったことは気がつかないと思う。
 マミヤOPからすれば単なるシャフトメーカーから、ゴルフクラブを含む総合的なゴルフ用具のメーカーになるわけで、この買収は企業の戦略に沿ったものなのだろう。

 この買収に興味をひかれて他のゴルフメーカーのことを調べたら、私の知らないうちに様々な再編が起こっているのに驚いた。アマチュアゴルファーはゴルフブランドには関心を持ってクラブ購入の参考にするが、そのブランドのクラブを作っているメーカー、そしてそのオーナー会社などにはあまり関心がない。そこでゴルフファン、スポーツファンの方が気がつかないだろう企業再編の動きをまとめてみた。

 マミヤOPに買収されたキャスコは2年前にはウィルソンゴルフを買収していた。ウィルソンはアメリカの名門ゴルフメーカーで、メジャー3勝のアイルランドのパドレイグ・ハリントンが契約プロである。日本では少し前まで上原彩子が使用していた。ウィルソンがキャスコの傘下にあるということは、マミヤOPはキャスコとウィルソンブランドを手にしたことになる。

 アメリカのゴルフメーカーで、そのウェッジが特に定評があるクリーブランドはゼクシオブランドのクラブメーカーであるSRIに買収されている。SRIは住友ゴム工業の子会社で一時ダンロップの名前を付けていた。クリーブランドの契約プロにはPGAの賞金王にもなったビジェイ・シンがいる。

 タイトリスト、フットジョイのブランドを持つアメリカのフォーチュンブランズという会社は、今年3月にコブラのブランドをプーマに売却した。コブラのクラブは日本ではあまり人気がないが、欧米ではイアン・ポールター(この選手は石川遼があこがれるお洒落なウェアで人気だ)、カミロ・ビジェガス、リッキー・ファウラーなどのイケメンの若手が使用しているクラブである。日本では今年大活躍の馬場ゆかりが使用している。わたしもアイアンはキャロウェイとコブラを気分によって使いわけているが、両者は全くそん色がなく、何故コブラが日本で人気がないのか不思議な気がする。
 多分60歳以上のゴルファーのほとんどは値段の高いクラブが良いという思い込みと見栄から、ゼクシオとかホンマを好むのだろうが、実際使うと値段と使いやすさはほとんど無関係で自分に合っているかどうかの方がよほど重要だと思う。
 
 欧米で人気のコブラがプーマのブランドになるのは日本での人気獲得には良いチャンスだと思う。プーマのゴルフウェアは古閑美保が使用していることもあって若い人達には人気がある。そうした層を狙ったマーケティング戦略をとれば、コブラもナイキやテーラーメイドのクラブに負けない人気を得るかもしれない。

 プーマの歴史は面白いので少しふれておきたい。プーマは元々ドイツの企業で、アドルフとルドルフのダスラー兄弟が始めた運動用のシューズメーカーがその起源だそうだ。ダスラー社はサッカー、陸上用のシューズが好評で、大きく発展したが、その後兄弟喧嘩がもとでアドルフはアディダス、ルドルフはプーマの元になる会社を作った。両社とも世界的な大企業になったが、アディダスは総合スポーツメーカーとなりゴルフのテーラーメードもその傘下に収めた。一方、プーマは一流とは言えサッカーのシューズメーカーとしてのイメージが強かったので、今回のコブラ獲得はプーマ本体としても大きな転換点になりうるだろう。
 大体テーラーメイドがアディダス保有するブランド(ゴルフクラブメーカー)と言うことも多くの人は気がつかないと思う。その他にもゴルフクラブメーカーの再編があるが、それは次回で述べよう。