エアアジアX羽田就航

 マレーシアの格安航空会社(Low Cost Carrier)エアアジアXが羽田-クアラルンプール路線を12月9日に開設すると発表した。キャンペーン特価は片道5,000円という価格だ。往復で1万円となると時間が遅かろうが、食事がつかなかろうが文句はない値段だ。通常は往復2-3万円で、ピーク時には4-5万になるとの説明である。これまでも茨城空港には上海往復8,000円から5万円の春秋航空が乗り入れているし、ジェットスター航空は日本とオーストラリアの往復を5-6万で販売している。日本も本格的な格安航空券時代に入ったと言える。

 こうした航空会社は徹底したローコストオペレーションを行うことで、低価格を実現しているのだが、予約の時期、季節による価格差を、通常の大手航空会社より大きく設定するというマーケティング戦略でも違いを見せている。大手の航空会社は今後日本の百貨店のような道をたどるのかもしれない。要するに高コストを反映した価格でも構わないという一部の顧客を相手にするのだ。飛行機の方には出張のビジネス客がいる点まだ良いかもしれないが、これも出張の回数が増え、海外の会社との価格競争が厳しくなると、格安航空を利用する会社が増えるかもしれない。もしくはLCCの方で出張のビジネス客を取り込む戦略をうってくることは十分に考えられる。

 私たちは日本人の感覚でこの運賃を考えてしまうが、アジアの国の人たちの航空運賃に対する受け止め方は少し違うだろうと思う。シンガポール、マレーシア、タイは仕事でも遊びでも何度も行ったところなので、日本とは豊かさが違うと感じる。シンガポールはその特殊なポジションで日本を除けばアジアでは最も豊かだが、それでも高学歴で高収入を得る一部の人たちとその他では収入に大きな違いがある。マレーシア、タイではその違いが一層大きくなるのだ。大企業に勤める人でも(これらの国の場合大企業の多くは海外の会社であり、自国の大企業は限られている)日本の給与と比較すると年収で(日本の場合ボーナスがある)、シンガポールは60-70%、クアラルンプールで40-50%、バンコクで20-30%と言う感じだと思う。もちろんこれらの国では大学(院)卒は一握りのエリートで、その可なりの割合が欧米の大学(院)を出ている。言い換えれば大半は裕福な家庭の子弟なわけで、自国内の豊かさとしては日本人の大半より上位に位置するだろう。しかし彼等にとっても国際的な商品やサービスを購入する時は日本人に比べると負担は大きいのである。私が勤めた会社のこれらの国のマネージャーたちの多くは日本やヨーロッパの車に乗り、ロレックスやオメガをしていたがほとんどが夫婦とも高学歴で大企業に勤めるか、どちらかが自分でビジネスをしていた。特別な金持ちたちを除いては、そうやって私たちのような生活を維持していたのである。

 こうした国々では、それなりに裕福な人であっても航空運賃は高いものだし、格安航空券でさえ(キャンペーン価格を除けば)我々が感じる安さとは違うと思う。ましてやそれほど豊かでない普通の人たちにとっては格安航空券さえ高いものかもしれない。豊かでない人が飛行機に乗るのかと思うかもしれないが、こうした国では飛行機だけが便利な交通手段であり、国境を接しているため外国へ行くという行為は日本人よりよほど一般的である。
 エアアジアが飛ぶクアラルンプールはきれいな街だし、そこから飛行機で1時間ほどのペナン島ランカウイ島も気軽に楽しめる温かみのあるリゾートである。これを契機に多くの人が行くことになれば、マレーシアを知り好きになる日本人も増えるだろう。そしてマレーシア人にも同じことが言えるかもしれない。そんな時でもマレーシアと日本の経済的な格差が生活に与える違いについて、頭の片隅に置いておくのは必要だろう。これは他のアジアの国に対しても同じである。