南部アフリカ旅行(4) ビクトリア瀑布編

 旅の最後のハイライトはビクトリア・フォールズの観光である。ビクトリア・フォールズジンバブエザンビアの国境に位置する大きな滝でイグアス、ナイアガラと共に世界三大瀑布に数えられる。ここは普通に歩いて見た後に、ヘリコプターから眺め、最後にジンバブエザンビアにまたがるビクトリア大橋から見る。滝については後述するがまずジンバブエザンビアについて今回知ったことから書くことにしたい。

 ジンバブエザンビアは元ローデシアで、北ローデシアザンビア南ローデシアジンバブエとなった。特に南ローデシアは30−40年前には南部アフリカの紛争地域としてしばしばニュースで報道されたが、そこが今回訪れた国になったことなど知らなかった。いかにアフリカについて無関心だったかということだ。アフリカに援助をという支援キャンペーンに参加しても、貧困と病気に悩まされる地域への支援だという程度の認識で、具体的にどこの国のどの地域がどんな状況なのか、何故そうなったのかなどにはほとんど関心がないということだ。それでも支援をしないよりした方が良いという考え方もあるだろうが、それなりの関心と現状を理解に基づく問題意識もなく支援に参加したりするのは不誠実な気がして恥ずかしくなった。

 ローデシアは元ケープ植民地政府(現南アフリカ)の首相だったセシル・ジョン・ローズ(Cecil John Rhodes)が軍を使って現地人の居住区を侵略して統治した地域(イギリス本国の4倍だったという)で、彼にちなんでローデシア(Rhodesia)=ローズの家(国)と呼ばれたのが始まりだ。このセシル・ジョン・ローズはダイアモンドの鉱山を発見しそれを発展させたことで財をなした。世界最大のダイアモンド販売会社のデビアス(De Beers)はローズが始めたものだ。徹底した人種差別主義者でアフリカをイギリスの植民地にしようとした人だったそうだが、強引な拡大政策が現地の人の反発を招き、また世界からの非難を浴び(イギリスも最後は助けなかった)40代前半で失脚し、49歳で亡くなった。アフリカのナポレオンと呼ばれた人で本や映画にもなっている。

 1964年に北ローデシアザンビアに、1965年には南ローデシアジンバブエになったがジンバブエは独立後も白人政権が続き現地人は虐げられていた。1980年に初めて現地人の政権ができ、その年にロバート・ムカベが二人目の黒人大統領になった後ずっとムカベ政権が続いている。こう書けば容易に想像できることだがこの政権は独裁政権で、非民主的な政権運営が続いている。これについて国連でも非難声明が提案されるのだが主に中国とソ連の反対で採択されないという。特に中国のジンバブエへの肩入れは強く、現在建築中のビクトリア・フォールズ空港の新しい建物は中国の寄付によるものだそうだ。

 ムカベ大統領は白人支配を止め、白人が所有していた大農園を強制的に接収して現地の所有にしたが、作物栽培のノウハウを引き継がなかったので、生産力はガタ落ちになり、アフリカ有数の食物生産国だったジンバブエはずっと貧困にあえいでいる。猛烈なインフレに悩まされ、ジンバブエ・ドルは50億ドル札、250億ドル札、500億ドル札などが発行されたが当然ながら上手くいかず、現在は米ドルが使われている。白人を排除すれば政治や経済は上手くいくというほど単純でないのが難しいところだ。それでも南アフリカに比べるとジンバブエはアフリカ人の国と言えると思う。政治や経済には問題があるとしても、われわれが接した現地人は明るく陽気で、豊かな南アフリカの現地人より恵まれていないなどとは言えないようだった。

 それではビクトリア瀑布の写真を見てください。





 ビクトリアの滝がイグアスやナイアガラと明らかに違うのは見物しづらいということだ。風向きの関係もあるのかもしれないが陸から滝を見ていてもものすごくしぶきを浴びる。ほかの二つの滝でも濡れることは濡れるが船に乗って近付いたりしなければこれほどではない。かなりしっかりとしたかっぱを貸出したり、添乗員がカメラが濡れないようにビニールでくるめなどと事前に言うことから、ごく水量が少ない時を除いて見物しながらびしょ濡れになるのが普通なのだろう。水量が最も少ないのは11月で、9月から1月が少なく、2月から5月が多いそうだ。

 まあこれは見る方の勝手な気持ちで滝はなかなか雄大で落差も大きく見ごたえがある。三大瀑布として恥じない堂々たる威容だが、大きさや見やすさという点でイグアスには劣る気がする。ナイアガラは水量が豊富で、アメリカらしい明るく楽しい大観光地だが、スケールという点ではやはり一番劣るように感じる。この滝の見にくさはみな感じるようで、ツアーにもヘリコプターからの観光が組み込まれている。これは確かに一見の価値があるもので地球がなにかの力で抉られて滝ができたことがよくわかる。

 ヘリコプター乗り場の様子で、かなり離れた場所だが滝のしぶきが高く上がっているのが見える。


 次が空からの写真です。




 ザンベジ川の眺めも中々です。

 次はビクトリア大橋からの眺めです。この橋の真ん中にジンバブエザンビアの国境があります。




 バンジー・ジャンプの場所としても有名だそうです。実際飛んでいる人がいました。



 滝の上流にはビッグツリーと呼ばれるバオバブの木があり観光客が訪れています。

 最後に二枚ほど締めの写真をどうぞ。
一つ目はカバの置物でいろいろなところに置いてあり、大きくて愛嬌がありすっかり気に入ったのですが、値段が高い(約30万円ほど)のと大きくて重くてとても送れないことから持ってくるのは諦めました。

 二つ目はジンバブエのレストランでイモムシのようなものを食べたことの証明書です。ツアーの女性達は気味悪がっていましたが、食べると塩気が有りなかなか美味でした。mopani wormというらしく、インターネットで調べると食べた人の話やこのイモムシの説明がしっかりあるので有名な食べ物なのだと思います。(現地の人にとっては貴重なタンパク源.なのでしょう)


 以上が私が行ったアフリカツアーのハイライトです。パック旅行はあまり好きではなかったのですが、トルコ、中欧、南米、アフリカと妻に付き合ってきましたが、中々楽ちんで良いものだという気がしてきました。わたしより好奇心と気力に勝る妻はその間にもクロアチア南イタリア九寨溝その他をパックで訪れていて、そのエネルギーは尽きることがありません。わたしはこの辺でパック旅行とは少し離れて、もう少しわがままなで気ままな旅行に行きたいと思っているのですが、旅行には欲張りな妻と意見が一致するか微妙なところです。
 でもアフリカはとても良かったのでもし行きたい気持ちがある方がいれば’ぜひ行ってきたら’と背中を押したいほどです。わたしも体力気力があればまたその内にとも考えているほどです。