2012年12月衆院選挙

 衆院選挙が12月16日に決まった。谷垣・野田の約束などよりもっと早く、例えば2010年の参院選の後にやってもよかったのに、大震災があったりして今になった。2009年の政権移行後、民主党は与党としての体をなさない有り様で、国民の信頼を全く失っていた。民主党は、地道な政策をコツコツとやり続けることの大切さを理解せず、人気が出そうなことばかりをやりたがる体質(またはそうした体質を持つ政治家が多い)を持っていた。派手なことばかりやりたがるが、そのための資金を生みだす地味な事業の運営には興味を示さない企業経営者のようなもので、こんなトップがいる企業は当然行き詰まり、経営危機を迎える。だから来たるべき選挙で民主党が大敗しそうなのもやむを得ないと思う。

 週刊誌などの選挙予測では自民党現有議席の倍以上になり、民主党は3分の1近くなるという。もっとも今の民主党議席数は、小沢グループをはじめとする反主流派の50人ほどが抜けた後の数だから、実際の減少率はもっと大きい。第三グループの’維新の会’や’みんなの党’は伸ばすだろうから、選挙後は今の政党の枠組みが続くとすると、自公が半数以上をとり、民主、第三グループがそれに続くという形になりそうだ。

 党首討論で、自民の安倍総裁に対して三つの課題への協力を条件に、解散を明言した野田首相の迫力で民主はだらだらの下落傾向に歯止めをかけたと言われている。わたしはこれを良いことだと思っているが、出来れば今度の選挙では民主がもう少し頑張って欲しいと思っている。出来れば自公の半分以上にはいって欲しい。それでは自公が過半数を取れずに、また国会が紛糾してしまうというかもしれないが、そうなれば自公と民主が責任を持った論議や協力をするようになるし、その先には議員個人の目先の利益ではなくて、主義・主張でまとまるという再編が見えてくる。


 民主政権に批判的だったわたしが、なぜそんなことを思うかと言えば、最近の自民党の主張に失望しているからだ。それと共に、鳩山、菅と続いた民主党の首相の無責任さに比べて、野田首相には信念を持って難題に取り組もとする姿勢がみられ、その姿に共感を持っているからだ。消費税の増税原発再稼働と国民に人気のない政策を決定した野田首相には批判の嵐で、政権の支持率は史上最低と言われている。しかし野田首相の政治姿勢はそれほどひどいものなのだろうか。彼からは今のままで手をこまねいていたら、この国は駄目になるという強い危機感が感じられる。少なくともこうした危機感を感じさせ、そのために不人気なこともやるんだとう決意を感じさせる政治家は他にいない。ほとんど全ての政治家は目先の人気、すなわち選挙への影響、だけを考えた政策を口にしている。

 大半の政治家は、国家の財政がほとんど破産状態なのに、それに正面から目を向けようとはしない。増税が先か景気回復が先かの議論はもう何年もやっていて、いまだに結論が出ないが、わたしが景気回復論者の政治家を胡散くさく思うのは、彼等の大半が現実をまともに見ようとせず、希望的観測で議論をしているように感じるからだ。前にも書いたが、この国は45万円の月収で90万円の生活をしている人と同じだ。足りない分は借金で補っている。借金総額は資産を大幅に上回っていて、返済不能にも思えるが、当人は会社の新製品が大ヒットし、自分がその功績で出世すれば返せるとか、今ひそかに書いている小説が賞をとれば返せるなどと言っている。野田首相はこうした現実とまともに向き合っている数少ない政治家に見える。鳩山、菅が去り(菅はまだ分からないが)、小沢が袂を分けた民主党は、こうしたリーダーのもとで地道にやれば、まだまだ再生は出来ると思う。

 一方の自民党は色々と政策を打ち出しているが、どれも近視眼的で長い目でこの国を建て直すという姿勢は感じられない。前回の総理の時にも感じたが、安倍総裁には政治哲学も胆力も見られない。刷り込まれたような国家観と前回の失敗を取り戻そうという意地が見えるだけだ。自分の発言の結果、円安が進み、株高になっていることに気を良くし、お札をどんどん刷ってじゃぶじゃぶにして国債を買えば景気は良くなる、などと発言している。そうすれば短期的に円安、株高が実現できるかもしれないが、それを支える国際環境がついてこなければ、すぐに失速する。(こうなる可能性がはるかに大きい)そうなった場合、前回のトラウマから、一層の国債発行を行い、歯止めがきかなくなり、結局国債の価格は暴落するだろう。起こるのは超インフレである。一年間に物価が10倍や20倍になったら国民の生活は破綻である。

 また中国をはじめとする近隣諸国と緊張感を持ちながら、つかず離れずと言ったしたたかな外交が出来るとも思えない。とても単純な国家観、歴史観でいたずらに摩擦を強めるような気がする。だから今回自民党が大勝するのは日本にとっては良いとは言えない気がする。日本維新の会なども十分な識見を持った候補者を確保しているようには思えないし、そもそも橋下大阪市長の力量が分からない。単なるアジテーターなのではという疑念がぬぐえない。そうなると民主党が予測よりもっと議席をとらないといけなくなる。野田首相の頑張りはそうしても良い、そうした方が良いと思わせるものがある。

 12月16日の結果は楽しみだ。みなさん、特に若い方々は是非選挙に行ってください。