切手の値段(2)

 前回おもに1956年以降の記念切手のことを書いた。私の持っている切手の値段を調べる過程で分かったのは、1957年より後の切手はほとんど価値がないということである。当たり前だが、投資を考えて大量発行の記念切手を買うほど、愚かしいことはないというのが実感だ。

 今回は重複を数えると30枚ほど持っている戦後すぐの切手と戦前の切手について書く。これらの切手が面白いのは単純に古いものを調べる行為に尽きる。記念切手は調べやすいが、それ以外のものはインターネットで切手の写真を見ながら照合してゆく。同じものが見つかった時は、中々嬉しいものだ。

 今回その素性を解明するのに時間がかかったのは、年賀切手だった。記念切手の項目にも、普通切手の項目にも見つけられず、手当たり次第に色々と探してゆく過程でわかったものだ。具体的には昭和11年(1936)の'富士'、昭和26年の'うさぎと少女'、昭和27年の'おきなの面’である。この中で'おきなの面'は使用済みである。昭和11年のこの年賀切手は父から貰ったことは間違いないが、これがそれなりに価値があることは、今回調べて初めてわかったのである。ちなみにこれは4,000円の値段が付いていた。'うさぎと少女'は1,000円、'おきなの面'は未使用で2,000円とのことだ。

 戦前の記念切手も何種類かあるが、3種一組とか4種一組のもので、2種類だけあるといったものが多いうえ、状態もあまり良くなく、とても価値があるとは言えるものではない。完全に揃っていても、値段は記念切手だけあって枚数も多いらしく、古い割には高くない。その中で唯一4種揃っているのが、昭和10年(1935)の'満州国皇帝閣下御来訪記念'で、これは1セットで7,500円となっている。しかしこれでも1枚当たりだと1,900円弱でそれほど高価なわけではない。他のものはまあ古いだけだ。

 一方、一枚だけ普通切手がある。記念切手ではないので大したこともないと思っていたが、調べるとこれが一番高価だった。新昭和の'能面’という切手で、同じデザインで第一次と第二次があり、どちらも額面は五拾圓なので、私のがどちらかは分からない。一次が17,000円、二次が15,000円である。何の変哲もない切手だが、何故か発行枚数が少なかったのかもしれない。

 これに興味を持って戦後の普通切手を調べたが、記念切手よりも高い値段が付いているものが大半だ。1円切手で言えば、第一次の前島密が80円、第二次が10円と額面よりはるかに高い。7円切手の金魚は第一次のもので200円で、約30倍である。私たちが日常使っていた普通切手の方が、後で価値が出るのは面白い。多くの人が普通切手は希少性がないと考え大事にしないから、郵便料金の改定などで発行されなくなると、未使用のものは数が限られていて値段が上がるのかもしれない。大量発行の記念切手は、多くの人が錯覚で価値が出ると思って使用しないから、じゃぶじゃぶ状態になってしまい、値段が上がらないのだ。前回も書いたように、1957年以降の記念切手は額面10円が、現在の売値で30円程度だから、もし業者に売っても額面が良いところだろう。最近のものだと額面以下でないと、業者は引き取らないだろう。だから最近の切手を持っている人は、コレクション以上に持っているものについては、切手としてさっさと使ったほうがよいかもしれない。

以上が私の切手価格調査の結果だが、それでも切手蒐集は楽しいものだと思った。今回新しい切手アルバムを買い、自分の切手を年代別とテーマ別に整理しなおしたが、この程度のコレクションでも、見ていると時代を感じたり、デザインの美しさに感心したりする。 だから何らかのテーマを持って収集をすると、とても奥が深く、また喜びも大きいのではと思う。(尚、ここでふれた切手の写真を当ブログの2013年6月20日の’古い切手の写真’に載せ、その後2015年11月19日にもう少し良い出来にしようとまた撮り直してブログにアップした。興味のある方はそちらも参照してください) 今回は値段の話ばかりしてどうも上品とは言えなかったので、最後にお口直しを。
 
 わたしが勤めたエッソ石油の先輩の樋口さんと言う方が、素晴らしい切手のコレクションをネットで公開している。石油に関する世界中の切手を網羅したもので、石油産業の歴史「石油の栄光と挫折」というタイトルがついている。4つの大きな章に分かれ、第一章は「石油産業の技術革新」、2章は「国際石油会社の発展」、3章が「世界各国の石油産業」、4章が「地球環境問題への対応」となっている。全ての章が節に分かれ、テーマを説明する切手と解説が付いている。こう書いても、中々その見事さは伝わらないので、下記のサイトにアクセスすることをお勧めするので、ぜひ一度ご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/higuchi-stamp