切手の値段(1)

 切手を少し持っている。子供のころ友達が集めていたので、真似をして自分も集めた時のものである。私の生家は特定郵便局をしていたので、切手を買うのには並ぶこともなく良い条件だった。開局は1878年だそうで、相当に古い郵便局なのだが、とくに古い切手があったわけではなく(あったのかもしれないが私は知らない)わたしが切手集めをしていた頃、戦前の切手の一部を父から貰ったことがあるくらいだ。これらはお世辞にもきれいとは言えないもので、また何の整理もされず袋か何かに入っていて、わたしは興味が持てなかったので、いい加減にしまっておいた。私と同様、父もなにかを蒐集するすることにこだわりを持っていなかったのだと思う。


 わたしの切手は何十年も放って置いたので、状態が悪いものが多い。一応専用のストックブックに入っていて、当時私が大事だと思ったものは透明のシートのようなもので包んである。あらためて見ると大半は1960年から1965年の間のものだ。私が10歳から15歳までで、その頃切手集めをしていたことが分かる。本棚の隅に長く寝ていたから、少しは価値が出たのかと思い、インターネット上の切手業者のサイトで、値段を調べてみて色々なことが分かった。とはいっても切手とか、何かの蒐集に詳しい人には当たり前の事実なのだろうが、そんなことに全く疎い私には興味深い発見だった。以下で価格について書くが、高い安いなどと書くとどうも下品なのだが、今回のテーマの性格上やむをえないのでお許しいただきたい。

 記念切手から調べてみようと思い、年代別のセクションから1946年から1959年を見た。全般的に安いというのが最初の印象で、高いのはごく一部でそんなものは私が持っている中にはない。それでも1948年から1956年までは比較的高いが1957年以降はほとんどがとても安い。大体30円くらいである。当時10円で売り出したものだから、3倍と言っても物価を考えたら安すぎるようで、要するに大量発行した結果なのだろう。どうも国をあげての詐欺のような気がする。


 私の持っている中で比較的良い値段が付いているのは、1956年の切手で、'東海道電化完成記念’、'東京都開都500年記念'、'マナスル登頂記念'である。これらは10円のものが800円、500円、400円になっていて、たいしたものだと思ったが、良く考えると合計してもゴルフボールが3個か4個買えるくらいで情けない。

 こうした傾向は人気が高かったテーマごとのシリーズでも同じで、第一次国立公園シリーズは一部が戦前発行のものだが、私が持っている大山が170円、日光中禅寺湖が220円だ。もっとも元の値段は2銭である。但しこのシリーズには9,000円を超えるのもあった。第一次がこれだから第二次はまるで駄目で30円から50円がほとんどで、富士山だけが150円となっている。
特定公園シリーズも同じだが少し高いようだ。

 浮世絵シリーズでは'月に雁’が有名で10,500円となっていたが私は持っていない。'ビ−ドロを吹く娘'の1750円、'写楽'の1400円辺りが良い方で後は200-300円だ。広重の東海道53次も同様で、桑名、蒲原が1000円を超えているだけで、私が持っているのは80円前後だ。

 スポーツについては、国体記念が毎年発行されていて、わたしは1955年の10回大会から19回大会まで持っている。2枚ひと組で10回大会だけは840円だが、以降は50円だ。東京オリンピックの切手シート、4枚ひとシートで6シートあるが、これが全部で2,000円である。やはりオリンピックは少し違うようだ。(と言っても一枚当たりは大したことはない)

 
 こうした記念切手と比較すると、普通の郵便切手の方が高い値段が付いているのには驚いた。これと共に、いくつかある戦前の切手の価格については次回に述べたい。