力士の怪我多発に想う

 稀勢の里が久しぶりに日本人横綱になってからまた相撲人気が高まってきた。白鵬の様々な記録更新や高安、御嶽海、宇良などの若手力士の台頭で、秋場所も楽しみにしていたが日馬富士を除く三横綱が初日から休場になった。怪我なのに無理して出場しても痛めたところを悪化させるリスクがあるから、万全の状態になるまで休んだほうが良いと思い、出場する力士、特に上記の若手に期待していた。ところが二日目の土俵で高安と宇良が怪我をして休場となり何とも興ざめの場所になってしまった。

 大男の力士たちが土俵上で激しくぶつかり、突いたり、投げたりを一瞬のうちに行うのだから怪我が起こるのはある程度止む負えないと思う。しかし怪我の程度がひどくなりがちだったり、多発することを考えると、しっかりと原因を分析して必要なら対策を講じるべきだ。わたしは相撲の専門家ではないから何が怪我の原因かなど分からないし、おそらく様々な要因が絡み合っているだろうと考えると簡単に結論が出せる問題ではないのかもしれないことも分かる。しかしここでは原因の一つとして以前から疑問に思っていたことを書くことにする。

 それは土俵の大きさについてである。高見山小錦などの超大型外国人力士の登場後は日本人力士も大型化して、わたしが子供の頃の名横綱である栃錦若乃花を今に持ってくるととても小さい力士になってしまう。こうした力士の巨大化にもかかわらず、土俵の大きさは当時と同じままである。これは明らかに相撲内容に影響を与えているし結果として怪我のリスクが高まっていると思う。相対的に土俵が小さくなるのだから、突き押しや寄りで土俵から出すことが容易になるし、力士はそれに対応して瞬発力を高めて一気に勝負をつけようとする。その結果足首やひざに負担がかかり、また勢い余って力士が土俵外へ飛ばされることも増える。怪我のリスクが高まるというわけだ。

 この土俵の大きさ問題をインターネットで調べていると同じような疑問を持つ人がかなりいることが分かった。「新型大型犬相撲日録」なるブログでは土俵の大きさを力士のサイズに合わせて変えることを提案している。現在の土俵の大きさは直径4.55メートルの円形でこれは1931年(86年前)にそれまでの直径3.94メートルから広げたそうだ。ちなみにこのサイズの変化は昔の測り方では13尺から15尺への変更に当たるという。力士の体格の変化に伴う変更だった。上記のブログの筆者は、当時と今の力士の平均身長を基準にした変更を勧めている。1931年の力士の平均身長は176センチで現在の身長が186センチだそうだ。力士二人が土俵上で両手を広げるとほぼ身長の二倍になることから、その長さと土俵の直径の比率を同じにしたらどうかというのだ。この考え方でいうと今の土俵の直径は4.85メートルになるそうで16尺に相当するという。比率を同じにする必然性がもう一つ分かりにくいが、納得しやすい説明だ。

 矢崎武弘という人はこれに体重の情報を加えている。1931年は176センチ、108キロだったのが現在は186センチ、152キロになっている。身長は6%の伸びだが、体重は41%増えている。こうした力士がぶつかり合ったり、絡み合って土俵外に落ちたりする時の衝撃は86年前とは比べ物にならないだろう。そうなると身長の変化だけで土俵の直径を見直すだけではなく、高さや周りの幅の大きさも検討したほうが良い。土俵の大きさの問題を今のままほおっておくと相撲内容が味気ないものになるだけではなく怪我のリスクが高まる。もう真剣に考える時期に来ていると思う。