スポーツ人気の変化

 日本人のスポーツ選手が国際的な舞台で活躍するのが目立ってきたように感じる。テニスでは錦織、サッカーでは香川、スキージャンプでは伊藤などが最近目覚ましい成績をあげている。それに比べると我々親父たちが好きなゴルフ、野球はもう一つ盛り上がらない。もちろんこれらのスポーツはシーズン序盤かまだ始まっていないという事情もあるだろう。今年の野球では、ダルビッシュをはじめ多くの日本人プレーヤーがアメリカでプレーするので注目度も高いし、応援のし甲斐もある。しかしサッカーやテニスにくらべると、野球はMLBは大分違う感じがするが、日本の野球は何か古臭い感じがする。同じことがゴルフにも言える気がする。

 多くの親父たちは野球とゴルフを長い間熱心に見て少し飽きがきたが、それほど熱心には見なかったテニスやサッカーは新鮮に感じると言うのもあると思う。しかしテニスやサッカーの激しさ、スピード感、肉体の限界に挑むような過酷さが野球とゴルフにはあまり見られないので、物足りなさを感じるようだ。ウェアもテニスやサッカーは若々しいが、野球、ゴルフはやはりオヤジっぽい。これでは斎藤祐樹石川遼の人気も錦織や香川に負けてしまうような気がする。CMへの起用でも近い内に逆転されるのではないか。

 野球もゴルフも日本に入ってきてからの長い間、人気スポーツになっているので、ルールは同じでもアメリカやヨーロッパとは違った形で発展してきている感じがする。野球で言えば、日本の野球はチームの勝利優先で、せこく伸びやかさがない。一流のプロとプロのぶつかり合いという最もファンを魅了するところから、勝利優先の点を取る確率野球になってしまっている。バッターはボール3からはめったに打たないし、ノーアウトランナー1塁だとダブルプレーを避けるバッティングをする。プロが集まって、こんな野球をして面白いのかと考えてしまう。アメリカ野球はその点もっとシンプルだ。そこには男と男のぶつかり合いと言うスポーツの醍醐味が残っている。ダルビッシュがMBL行きが決まった後の記者会見で、'真剣勝負が出来なくなった'という意味のことを言っていたが、実力があるプレ−ヤ−ほど日本の野球はツマラナイものになっているのだろう。

 ゴルフの問題点は選手層の薄さとコースの易しさだろう。これが競争を弱め、試合の緊迫感をそいでいる気がする。石川はハワイオープンで予選落ちをしたし、今田は4週連続で予選が通らない。日本のトーナメントだったら、こんなことは決して起こらないだろう。池田勇太などはアジアンツアーのミャンマーオープンでも予選落ちをしたくらいだ。これでは人気も出ないはずだ。野球もゴルフもこれが日本式で、本場より優っているなどの強がりはやめて、もう一度原点に戻ってプロの技を見せ、熾烈な戦いをする形に戻すべきだと思う。そうでないとファンは確実に減ってゆくと思う。


 もう一つの点は、野球もゴルフも日本でそこそこやれれば、可なりの収入が期待できるスポーツだということだ。しかしサッカーやテニスはそうではない。海外で活躍して初めて一流と認められ、高額の収入も手に入る。この差は選手の意識に強く影響を与える。日本のテニス、サッカーの一流プレーヤーは海外でやることがベースになっているのに、野球、ゴルフはほとんどの選手が日本中心で満足している。チャンスがあれば海外にチャレンジし、運に恵まれて良い成績が収められたら上等というスタンスだ。野球やゴルフの選手は海外でやる時は通訳まで付くが、サッカーやテニスの選手たちは自分で言葉を覚え、生活に慣れてゆくのが基本だ。この心掛けの違いが、選手の凛々しさや逞しさになって表情に表れ、益々錦織や香川がカッコ良く見えてしまう。そして実際現地の言葉でのインタビューにも対応して、外国語コンプレックスの強い日本人には輝かしく見えてしまうのだ。(ゴルフでも今田は完璧な英語を話すので例外だが)

 だから今年のダルビッシュや岩隈の責任は重大だし、また石川や今田にもぜひ頑張ってほしいと思う。このままだと野球もゴルフも相撲と同じ運命を辿ってしまうぞと言いたいくらいだ。