天気予報から思うこと

 天気予報が好きで、TVやインターネットの予報を良く見る。特にゴルフや旅行の時は、一週間ほど前から色々な天気予報をチェックする。どの予報も変わり映えがせず、もう一つ面白みがない。予報の元になるデータが気象庁から出ているので、やむを得ない点もあるのだろうが、同じデータであってもその分析、解釈には違いがあっても良いのではと思う。TBSに出ている森田正光さんは、比較的独自の予想を出そうとしているようだが、他は似たり寄ったりだ。予報士の人気が見た目の良さと解説の分かりやすさだけに依存しているのは、TVの性格上当然だとは思うが、本来の役割を考えるとつまらない。予報の正確さが予報士を評価する重要な要素であるべきだ。

 予報の当たりはずれで言うと、当然だが短期の予報、すなわち翌日、翌々日の予想の正確度はかなり高いが、週間予報になるとかなりばらつく。気象庁の週間予報はA,B,Cで信頼度を付けている。(Aが最も精度が高い)また翌日、翌々日と言っても、まるではずれることもたまにあるから油断できない。わたしはこの予想の当たり外れの度合いで、予報士を採点したら面白いと思う。例えば7日前にした予想が当たれば4点とし、1日近づくごとに1点づつ下げて、3日前から前日までの予想は当たっても0点、はずれた場合は前々日の予想は-2、前日は-4として、これを半年単位で評価する。あの予報士は当たらないが、可愛いからいいかとか、あの人は得点は平均的だが、たまに大穴を当てるなどとなって盛り上がるだろう。もちろんこの採点は私が今思いついたものだから、頭の良い人がもっと正確さを評価できて 、かつ面白いものを作ってくれればよい。どこかのTVか週刊誌でやればよいのにと思う。

 上述した採点を一言でいえば、どうすれば事なかれ主義を排することが出来るかということだ。30年以上も前だが、ビジネススクールでの'マネジリアル・エコノミックス’の授業で、アメリカのある地方では天気予報士がリスク回避的な予報をしがちなので、インセンティブを出してこれを防ごうとしているとの説明があった。天気予報士のリスクとは、予報が外れた場合に受ける非難だと考えられるが、これを避けるために雨の確率を本来の予測より高くして発表しがちなのだろう。予報をそのまま発表するより、少し悪い方へ変えて出す方が非難されないという事なかれ主義だが、インセンティブを出すことでこれがなくなるかどうかは、微妙なところだ。インセンティブの額が非難されることの苦痛より大きければ有効だろうが、この苦痛を金銭的に測るのは簡単ではないからだ。それでもこうした問題の存在を把握しているのは立派だし、それを金銭的な手段で改善しようとするのは、いかにもアメリカ的だとも言える。もっともこんなことが議論されるのは30年以上前だからで、天気予報に予報士の経験や勘が重要だったことを意味しているようだ。高性能のコンピューターを駆使して行う現代の予報は、個人の能力が入り込む余地が小さいのかもしれないが、そうだからこそはずれた時の不満は大きいのだ。やはり予測に対しての何らかの評価法があってしかるべきだろう。

 
 事なかれ主義は天気予報だけではない。そもそもTVの報道や番組作りがそうなっていると感じる。朝のニュースショーに出てくるコメンテーターなどはその典型的な例で、ある出来事に対して番組の意向に沿った意見だけを述べるだけで、真実はどうかなどを調べようとも、確かめようともしないようだ。多くの人はショーにおける自分の役割を果たすのが仕事だと考えているとしか思えない。野球の解説者にも当たり前のことしか言わない人がいる。私たちが見ていて面白いのは、自分の経験に基づいた理論で起こったこと、次に起こることを解説することだ。理論に基づいた予測が外れるのは恥ずかしいことではなく、結果を見てからもっともらしく解説することこそ恥ずかしい。こんな基本的なことが分かっていない解説者は消えてもらいたい。

 話は変わるが、上記の'マネジリアル・エコノミックス’の表記が気になる。以前'カタカナ英語の改善’として、ピーターバラカン氏のコメント'猿はマンキ、金はマニ’への共感を書いたが、エコノミックスはイコノミックスとすべきではないだろうか。日本ではEはエとして表記するがイと発音するのが普通の場合が多い。今はやりのecoとかecologyもエコ、エコロジーと表記されるが、イーコ、イコロジーが普通だ。その他のEで始まるカタカナ英語にも同様な例は沢山ある。誰がカタカナ英語を主導しているのかは分からないが、これだけグローバルと言っている時代なのだから、もう少し原音に近付けるべきだと思う。もっともEで始まる英語をエではなくイと表記しているケースもある。EnglandやEnglishはイングランド、イングリッシュが当たり前で、これをエングランド、エングリッシュとしたら馬鹿にされるだけだ。大新聞などは偉そうに色々な解説をしてくれるが、こうした点での改革を率先してやって欲しいものだ。それはこれから活躍してほしい若い人達にも歓迎されるはずだ。