英国人ブロガーのユーロ危機脱出案

 6月10日のCNNインターナショナルにヒラリー・ホワイトマンという記者の面白い記事が載っていたので簡単に紹介しよう。エドワード・ヒューと言う人のブログが世界中の金融関係者の注目を集めているのだそうだ。ヒュー氏は61歳の英国人で、20年前からスペインの田舎で暮らし、第二国語としての英語を教えている。彼は1960年代後半にロンドンスクール オブ エコノミックスに在籍したが、その頃はあまり熱心に経済を勉強したわけではないという。彼が再び経済学に関心を持ったのはずっと後で、日本経済の低迷に興味を掻き立てられたのだという。問題を見出したから経済学に興味をもったので、問題だけが興味の対象だと言っている。

 スペインのカタロニアのテレビに出演したり、ニューヨークタイムズにも紹介され、すっかり有名人になった彼にはIMFも意見を求めるそうだが、今の生活を捨てて新しい職に就く意図はないそうだ。

 20年もスペインに住む彼にはスペイン政府が口にしている公務員給与の5%カットなど簡単にはできないと思えるし、やる気もないように見えると言う。それよりもドイツがユーロの使用をやめマルクに戻るのが簡単で効果的な解決策だと主張する。そうすればユーロの価値は相対的に低下し、その結果スペイン、ポルトガルギリシャアイルランドなど負債にあえぐ国の競争力は回復して輸出が増えるだろう。それらの国は負債を減らすことができるし、将来の高齢化に必要な資金を準備できるだろうと言う。ドイツが再びユーロに戻りたいなら、地域的な経済的格差が是正された後にすべきだと主張している。

 ヒュー氏が考えるヨーロッパの金融危機の本質的な原因は各国の人口の年齢構成の違いにある。若年層の割合が多い国が負債を増やし、高齢化の進む国がそれを支える構図になっている。住宅建設ブームが起きてるのは米国、英国、アイルランド、スペインなど若い人が多い国で、これらのブームを支えているのがドイツ、日本、スエーデンなどの高齢化した社会で、貯蓄からくる余剰資金を保有しているからだ。ドイツなどでは早晩、近隣の破産寸前の国々を助けるのをやめろという人々のプレッシャーが指導層にかかるだろうと予測している。
 もちろんユーロ危機の原因はそれだけではなく、中央銀行や政府の適切な政策が打たれてこなかったことも指摘し、構造改革と高度の知識を持った機関が必要だとしている。

 私にはヒュー氏の意見の妥当性を判断することは出来ないが、祖国を捨てた一介のブロガーの意見がこれほどの影響力を持つ事実は大変面白いと思う。日本でしょっちゅうテレビに出て時流に乗ったコメントを出しているエコノミスト達が、これまでろくな予測や分析をしてこなかったことを考えると余計そう感じる。世の中には無名でも一級の見識と洞察力を持ち、問題を客観的に捉えることができる人がかなりいるのだと思う。

 しがないブロガーの私もこの記事には大いに勇気づけられた。私にはヒュー氏のような知識も見識もないが、徐々に増え続けている見知らぬ読み手の方々に励まされて、出来るだけこのブログも続けていきたいと思った。