中国企業レナウンを買収

 アパレル企業のレナウンが中国の繊維大手メーカー'山東如意意科技集団有限公司'(以下如意)と業務提携した。具体的には一株120円で第三者割当を行い、如意はレナウンの41%の株式を取得し筆頭株主になるわけだから、買収するに等しい。

 わたしは15年くらい前からレナウンの株を売買していた。当時この会社の株価は1年に1,2度大きく動くことが繰り返されていた。その動きのパターンに気が付いていた私は、100円くらいで買い、200円近くで売るのを繰り返し、良い小遣い稼ぎをしていた。名門アパレルメーカーの株が何故そんなに激しく上下するのかは分からなかったが、株価の動きだけに注目してそれに乗っていたわけである。多分仕手筋か政治家の資金作りに使われているのだろうと思っていたが、その後の業績の低迷を考えると経営陣の関与も疑ってよいのではと感じる。もっとも今となってはそれを証明する証拠もないし、私の推測にすぎない。

 今回の如意への新株割り当て価格は120円だから、私が売買していた当時の株価と変わらないではないかと思うかもしれないが、レナウンは2004年に子会社のダーバンと合併し、新会社となり株式の額面価格はなくなったが、設立時の株価は320円くらいになったのである。従って120円と言う価格は、2004年以前の50円の額面で考えれば19円位と言うことだ。簡単にいえば倒産寸前の企業の株価であり、いわばクズ株である。実際のマーケットでの株価は、如意の買収の発表がある前の5月20日には140円だった。これが5月28日には299円にまで急騰した。しかしそれでも設立時株価の約93%で50円株なら46円である。

 わたしは2005年ころにも可なりのレナウン株を買っていたが、リーマンショック以降業績回復の兆しも見えないので、昨年損切りして売却をした。今年あまりに下がっているのでまた買い戻していたので、現在はほんの少し取り戻したというところだ。

 レナウンに限らずアパレルメーカーは厳しい価格競争にさらされ経営状態は良くない。いくつかの有名企業が倒産している。アパレルメーカーが勝ち残るには、消費者が魅力的だと思う商品やブランドを創造して、マーケットに出し続けるしかない。コストの低減も重要な要素だが、魅力ある商品があってこそのコスト論議である。レナウンの主力ブランドはアーノルドパーマーシンプルライフとダーバンであり、これは40年前から変わらない。いくつかの新しい商品を市場に出したがヒットにはならなかった。またアクアスキュータムを買収したが、これも販売層が限られていた。一時不振に陥っていたバーバリが若い人までカバーする製品を作り、ブランドイメージを従来以上に高めたのとは大きな違いである。要するに多くの消費者の支持を得る商品を作ることが出来なかった結果、赤字企業に陥っていたのである。今年の決算時に発表した来年2月の予想も赤字であった。

 こうした状況での如意との業務提携である。約40億円の資金を手に出来る上、中国市場での販路拡大が容易になる。パーマー、ダーバンは以前のブランドバリューはないものの、時代に合った商品に変えている。私も株主優待などでバーゲンに行くことがあるが、どちらのブランドの商品も中々良いと思う。しかしいかにもブランドイメージが古く買う気があまり起こらない。ダーバンのスーツを買うならポールスチュアートやラルフローレンを買うのが普通だろう。しかし中国ならこうしたブランドイメージの低下の影響はないと思う。その商品がそのまま受け入れてもらえる可能性がある。上手くいけば劇的な販売回復につながると思う。

 今回の如意のレナウン買収を中国企業に日本の名門企業が乗っ取られたという趣旨の報道もあるが、わたしはそんな見方はあまりに島国根性にとらわれていると感じる。倒産寸前だったレナウンが生き延びるにはこれしかなかったと思う。2,3年後には株価が1,000円を超えている可能性さえあると思う。もっとも提携が上手くいかず、如意からも見捨てられたらもう倒産しかないことも否定出来ないが。