「ゴルフマガジン」50周年記念号

シアトルの空港の本屋で「ゴルフマガジン」50周年記念号を買った。A.パーマーの若い頃のトップスィングが表紙になっていて、その余白に過去50年の最高のプレーヤー達、ゴルフコース、レッスン、道具という特集記事がリストされている。中々充実した内容だが、その中でも興味深いものをいくつか紹介したい。

最初のエッセイはビル・クリントンの「私の好きなコース」である。彼はアイルランドのバリーバニオン(Ballybunion)ゴルフクラブについて書いている。長い間そこでプレーをすることを願っていたが1995年後半にアイルランドを訪問した際に誘われた。しかしまさにプレーするその日に米軍がドイツからボスニアに派兵されることになり、急遽ドイツまで兵士を見送りに行くことになりプレーはキャンセルになった。1998年に再度プレーするチャンスに恵まれたが、アイルランドのコースで2度しかプレーしていないことを聞いたキャディに、100を切れない方に20対1で賭けると言われた。最初の3ホールで15オーバーと叩いたが、残りの15ホールを10オーバーで回り100を切って、キャディの鼻を明かしたという。

クリントンはエッセイを次のように結んでいる。
'物事が上手くいかない時期でも、私はゴルフが好きだ。わたしは政治的に対立する者同士がもっと一緒にプレーしたら良いのにと思う。相手に敬意を持ってゲームすることで十分なものが得られること、最終的な勝ち負けなど問題ではないということを学ぶだろう’


偉大な人達(The Greats)という特集にはタイガーウッズが最初に出ているが、タイガーについて書いているのはあのロジャー・フェデラーである。フェデラーは史上最強とも言われるテニスプレーヤーで、4大大会での優勝15回、決勝進出21回は歴代1位である。世界ランキングは2004年2月から2008年8月まで237週トップを維持するなど、他にも様々な史上1位の記録を持っている。彼はこう書いている。

'私はタイガーに私自身を見る、そしてタイガーは私に彼自身を見る。われわれは共に無敵だと感じること、負けることはないと感じることが、どういうものなのかを知っている。私に関して言えば、ある時期スローモーションのようにプレーしたり、ボールに達するまでに普段より十分な時間があったり、相手の胸の内が読めたりすることがあるのだ。タイガーにもそういう時がある。’

フィールドが違っても頂点に立ち続ける人達には、彼らにしか分からない共通の感覚があるようだ。そうした思いを持つ者同士はお互いに率直に話し合い信頼を深めていくのだろう。ほとんどの人は彼に本音で語ろうとしないがタイガーは言ってくれるとして、次のようなジョークのやり取りを紹介している。タイガーが上海でプレーするのを応援に行った時の彼との会話である。

'お前そのパンツどうしたんだ? ぴちぴちじゃないか’とタイガー。
'何言ってんだ。これが普通のパンツだよ。ヨーロッパではアメリカにあるようなだぶだぶのチノパンははかないんだ’とフェデラーは返し、タイガーは友達をからかうのが大好きだと言っている。

フェデラーはタイガーのことを試合で、態度で、スポーツマン精神で、多くの若い人達を魅了するアスリートとしてのお手本(role model)だと評価している。唯一の欠点はだぶだぶのパンツをはくことだそうだ。


最後に史上最強ゴルファー(THE ALL-TIME GREATEST GOLFERS)を選ぶという特集を紹介する。15人の審査員(PGAのコミッショナー、USGAの理事、セントアンドリュースゴルフクラブの筆頭理事等々である)が自らの基準で偉大だと考えるプレーヤーを20人順番を付けて選ぶ。1位は20点で20位は1点となるので最大値は300点となる。ベスト10を紹介しよう。

1.ジャック・二クラス290点
2.タイガー・ウッズ 283点
3.ボビー・ジョーンズ265点
4.ベン・ホーガン  231点
5.サム・スニード  208点
6.アーノルド・パーマー199点
7.バイロン・ネルソン196点
8.ミッキイ・ライト 142点
9.ゲーリー・プレーヤー141点
10.ウォルター・へーゲン124点

11位以下でわれわれに馴染みのある選手を上げると、11位トム・ワトソン、12位アニカ・ソレンスタム、15位セベ・バレステロス、18位リー・トレビノ、20位ビリー・キャスパーなどがいる。

惜しくも20位に入れなかった選手にはニック・ファルド、ピーター・トムソン、グレッグ・ノーマンと続き、フィル・ミケルソンは26位とのことである。トム・ワトソンは今年全英オープンで勝っていたらベスト10に入っていただろう。

これは一種のお遊びだから、記事も Let the arguments begin....で終わっている。

20年後、ゴルフマガジン70周年記念号で同じことをやったら順位は違うと思う。タイガーが1位になっているだろう。日本人プレーヤーは入れるだろうか? 米ツアー37勝、メジャー3勝のミケルソンですら今回は選外だったのだ。石川遼選手がUSPGAで10勝したくらいでは全く論外だろう。もし入れるとしたら4大メジャー大会を1年間に全勝した時だろう。こんな奇跡は起こるだろうか?


この20人のプレーヤーが写真と絵で一同に会したところが見開き4ページになっている。アニカが右腕で作った力こぶをG.プレーヤーが触っていたり、とても楽しいグラビアなので興味をもたれた方は、Golf.com/50thとYahooなどの検索に打ち込むと、ゴルフマガジンの50周年ページに飛んでこのグラビアを見ることができる。グラビアは小さいがクリックすると拡大するし左右に動かせるので試していただきたい。