超高齢ゴルファーとの出会い

8月20日に妻と千葉の鹿野山CCに行った。1番ホ−ルのティグラウンドから少し離れた木陰でストレッチをしているとカートに座ってフェアウェイを見ていた妻が、赤い旗を付けたカートにすごいお年寄りがいるみたいで、とてもゆっくりプレーしているという。私たちの2つ前の組で、妻は今日は混んでいないようだけど時間がかかるかもしれないとも言った。私たちの前の組も夫婦とおぼしき方だったが、その方たちはそのお年寄りのプレーを目にしていたろうが、私は実際プレーを見ることはなかった。

途中のすれ違うホールでキャディさんがカートを運転してフェアウェイを走っていたので、歩かなくてもよいようにその人を特別にボールの所まで運んでいることが分かった。日本のほとんどのゴルフ場と同様に、このゴルフ場もカートは通常自動運転でカート道路しか走らせないからだ。

二日前の大阪出張の帰り、伊丹空港で倉本昌弘プロの'90を切る!’なる本を買い飛行機で目から鱗が落ちる思いで読んだ私は、前半を本の指導の通りまわれ、久々の90切りかと喜んで食堂でビールを飲んでいた。ふと周りを見ると、隣のテーブルにそのお年寄りと思われる方が同伴のプレーヤーといてお酒をのんでおられた。妻と'85歳位だろうか、この暑さの中元気だね’と話していると、そのお爺さんは他のかたが食事を終えたのを機に冷酒とグラスを窓際のテーブルに運んでもらい、そこからは白鳥(しらとり)コースの9番のグリーンがすぐ下に見えるのだが、また飲み始めた。お爺さんはハーフで終わるらしく同伴の方達はプレーに行く用意を始めた。

同伴者の中の一人のかたが私たちをすぐ後の組だと思ったらしく‘遅くてすみません。後半は大丈夫ですから’と声をかけたので、年齢を尋ねた。その方はためらいがちだが誇らしい口調で‘百歳です。’と答えた。‘今年の4月に百歳記念コンペをやって、もうプレーはしないと決めていたのですが、優勝してしまってまだやっています。’とも付け加えた。

すっかり仰天し感激した私は、そのテーブルまで行き挨拶をし携帯で一緒の写真を撮った。赤と白のストライプのシャツを着たダンディなお爺さんは‘もうゴルフは駄目だから、お酒だけだよ’と言って私と妻の手を握った。とてもひんやりした手だった。

100歳の心境やゴルフがどんなものか想像もつかないが、顔色も良いそのお爺さんの気持は全く我々と変わらないようだった。人は生きている限り、そしてそれなりに元気であれば、楽しくより良く生きようとするのかもしれないと感じられた。

20歳のころは50歳など想像もつかなかったし、40の時は60歳の気持など分からなかったが、私も自然と59歳になった。‘栴檀は双葉より芳し’というが、栴檀でもないわたしは幾つになっても芳しくないし、昔と変わらず‘駄目な人間だなあ’とつくづく思う。しかしそれも当然だ。100歳のゴルファーと並んで自分などまだまだヒヨッコと感じたのだから。

後半はお爺さんのパワーをもらってナイスショットでスタートしたがパットが不調になって惜しくも90切りはならなかった。倉本プロの本には‘昼のブレイクでビールを飲むな’とは書いてなかったと負け惜しみを言っても、心構えから直さないといけないのだろう。