老々介護に想う

 老々介護とは高齢者が高齢者の介護をすることだ。子が親の介護をする他に、夫婦、兄弟間の介護もある。双方が65歳以上の時にこう呼ばれるらしい。我が家も正月早々夫婦そろってしつこい風邪をひき、これがもっと深刻な状態だったらどうなっていただろうと、老々介護が他人ごとではなかった。

 わたしは年末から風邪気味だったが、1月5日に鼻と喉の具合が悪くなり熱も出たので翌日に耳鼻科に行った。薬ももらい一安心と思っていたら症状が改善せず寝たり起きたりしていると、10日頃には声が全く出なくなった。一生懸命にしゃべっても音にならず空気が響くだけで、初めての経験に驚いた。もう一度耳鼻科に行った後は鼻も喉も徐々に改善している。妻も同じように鼻と喉をやられた上に、結膜炎まで発症した。二人ともに具合が悪いとこれは本当に困ったことで、当然ながら家事が停滞する。幸い今回は完全に寝込むという状態ではなかったので、妻が何とか食事を作れたのは幸いだった。

 食べ物はデパートのネットショップで買うものが届くのでなくなる心配はないのだが、野菜や果物などちょっとしたものはスーパーで買うためこれが切れてきた。気分の良い時に買い物に行けたので今回は凌げたが、もっと症状がひどかったらどうにもならなかっただろう。もしわたしたちのように65歳以上の夫婦がともにインフルエンザに罹ったらどうすればよいのだろうか? まず医者に行けるのか? 仮に行けたとしても家でどう暮らすのか? 考えただけでぞっとする。普段健康な時は考えもしないが、体調を崩すと(特に二人とも具合が悪いと)生活のベースがとても不安定なことが分かる。

 こうした状況への対処としては、1)近所の人と助け合う関係を作っておく、2)公的なサポート体制を確認しておく、3)家族や親せきに頼るなどが思いつく。しかし濃密な近所付き合いが出来ている人は都会では少ないだろうし、公的なサービスもインフルエンザでは敷居が高い。そうなると子供に頼るということになるのだが、子供はそばにいないし、夫婦で仕事を持っていると、その上子供が小さいと、おいそれとは頼めない。どうにもならないというのが本音だ。医者に行き、薬がもらえたら、その後はじっとしてありあわせのものを食べて症状が改善するのを待つしかできないだろう。

 こうした短期だがどうのもならない状況の家族を助ける施設があっても良い気がする。そう書くとすぐに医者と看護婦が常駐してなどとなって、役人のレポートのように大ごとになってしまうが、そうではなく簡単なホテル形式でも良いのではないか。インフルエンザだけではなく、事故や怪我をした場合もそうで、最近は医療費の問題もあって入院は短期が多く自宅で療養することが多いが、二人ともに高齢だと自宅での療養と言っても大変なので、こうした人が泊れて食事が食べられるところがあればどんなに心強いだろうか。それなら初めから老人ホームに入ったらということなのかもしれないが、老人ホームにはまだ早いが1週間とか1か月とか世話になりたい人は多いはずだ。医療機関と連絡を取り、送迎をしてくれれば十分だ。

 こう書いているとどうもこれは高齢者専用ホテルだという気がしてきた。若者向けにYMCAがあるが高齢者向けの施設があってもいい。こちらはそれなりの広さと快適さが必要だから利用者の負担は高くなるかも知れないが、それでも需要は多いと思う。誰かやってみたらどうなのかな?