横浜市長選2021;カジノは本当の争点か

 横浜市市長選挙は8月22日が投票日だ。8人の立候補があり、まれに見る激戦だ。中でも現市長の林文子氏、国家公安委員長を辞して挑む小此木八郎氏、そして革新政党の代表としての山中竹春氏、この3人の争いと言われている。マスコミの報道では菅首相も支持を明らかにして小此木氏がややリードだそうだが、林氏、山中氏との差は小さいと言われている。それ以外にも元長野県知事で作家の田中康夫氏、前神奈川県知事で参議院議員松沢成文氏なども出馬していて、単純に前記の3氏の争いとは言い切れず、中々の混戦模様だ。

 

 市長選の争点はIR(統合型リゾート)、要するにカジノ誘致か否かで、その他コロナ対策などのようだ。わたしは個人的にはカジノがあってもかまわない(別になくてもいい)と考えているので、本当にこれに対するスタンスで市長を選んでいいのかという疑問がある。候補者の中にもカジノに情緒的に反対する人の反発を避けるためにカジノ反対を訴えていると思われる人もいるように見える。こんな人は当選したらやはりよく考えたらカジノは必要だなどと言い出しかねない。

 また現職の林氏だけは前記の5人の中ではカジノ賛成で、これは一定数いるカジノ誘致派の票を得る作戦と見られる。全体で言えば8人の候補者のうち6人がカジノ反対なので、これらの候補者たちがカジノ反対派の票を食い合うのに対し、カジノ推進を訴える現職の林氏は賛成派の大半の票を得られると予想されている。 林氏は前回の市長選の時はそれまでカジノ誘致を表明していたのに、選挙直前に突如カジノについては白紙と言い出した。要するに当選するためにカジノ問題を利用しているだけでカジノに対して確たる考えがあるようには見えないのだ。前回の市長選で勝利した後でまたカジノ推進派になったが、これも菅首相(当時は官房長官でカジノ推進派)に気に入られるためだったようだ。  

 

 このようにカジノを争点として候補者を選ぶのは、今の横浜にとって最適な人を選ぶことにつながるかは疑問なのだ。なぜもっと骨太の議論を仕掛ける人がいないのだろうかとわたしは考えてしまう。例えば県庁と市役所はともに巨大な組織だがそこに業務の重複はないのか、県と市の仕事をうまく振り分けてもっと効率よい業務のやり方はないのかなど、素人のわたしから見ても突っ込みどころが沢山あるように見えるのだが。大阪都構想を打ち上げて戦いを挑んだ橋本徹氏のような問題意識を持つ人はいないのか。今のところそうした議論を本気でやろうとしている人は見られない。

 

 目の前に掲げられた一見重要そうな問題への姿勢で判断するよりも、横浜の問題点を洗い出し、中長期にそれを改善する方法を考える能力を持った人、その実行が困難でも信念をもってやり抜こうとする実行力のある人を選びたい。今回の候補者にそんな人がいるのかは分からないが、人物をよく比較してわたしの基準にに少しでも近い人を探すのが有権者の責任だと思う。今の政治家はもう最低のレベルまで来ている。自民党の河合元議員夫妻や名古屋の河村市長、その他野党にもいる愚かな議員たち、彼らを選んだのはわたし達有権者なのだ。愚かな議員と同じくらい愚かなのが選んだ人間たちだ。同じ過ちを繰り返すのはやめたい。少しだけでも従来より頭を使って候補者を選び、選挙に臨みたい。横浜市長選はそれが問われていると思う。