70歳で初めての東野圭吾と伊岡瞬

 本屋でぶらぶらして本を探すのは大好きだ。もっとも本に限らずCDとか洋服を見て回るのも嫌いではない。コロナ禍であまり出かけなくなってぶらぶらショッピングが減り、暇なのに面白そうな本が手元にないので、息子の部屋の本棚を探してみた。(息子は独立して家にいないが部屋は残っている)村上春樹村上龍以外はわたしと全く作家の好みが違う。その中で東野圭吾と伊岡瞬の本を手に取った。東野圭吾については 何をいまさらといわれそうな大ベストセラー作家だが、わたしは読んだことがなかったのだ。映画やテレビドラマに使われることが多い作家なので、今更読むのも何となくミーハーに感じて敬遠していた。伊岡瞬については名前もよく知らなかった。

 

 手に取ったのは東野圭吾は「白夜行」で伊岡瞬は「悪寒」だ。どちらも面白かったので他の本も読んでみた。東野圭吾は「幻夜」「新参者」「危険な ビーナス」「祈りの幕が 下りる時」で伊岡瞬は「本性」「痣」「代償」だ。「幻夜」と「新参者」は息子の部屋にあったものだが他のは本屋でわたしが買った。東野圭吾の小説は息子の部屋にまだ沢山あったのだがそれらにはあまり興味を引かれなかったので自分で探して選んだ。わたしは二人の作家の本に似たような印象を持った。それは犯罪者が主人公のものが多かったからだろう。「白夜行」「幻夜」「本性」がそうで「代償」は悪人が主人公ではないがその悪さの描写は際立っていた。犯罪者が主人公のものはノワール小説という分野でわたしは特に嫌いでもないのだが、前記の本は話としては面白いのにあまり好きになれなかった。それでも「本性」は主人公の行動にペーソスがあり、小説全体が乾いた感じに仕上がっていて楽しく読めた。他の3冊は不幸な境遇で育った主人公が犯罪を重ねてゆく話で、小説としての展開には興味を引かれ最後まで読んだが後味が良くなかった。これは多分、作者が描いた主人公または登場人物の悪行とその設定がとてもリアルだったためで、好きになれないのはわたしの嗜好のせいだ。暗い話は好きではない。特に「代償」の悪人ぶりには辟易としたが、これは作者から見ると成功なのだろう。

 

 一方で東野の「新参者」と「祈りの幕が下りる時」は加賀恭一郎という刑事が主人公の小説でとても面白く読めた。勇敢で頭が良く、誠実なヒーローにはわたしはとても弱い。そのうえこの主人公はハンサムなのだ。映画では阿部寛が演じたそうだ。「危険なビーナス」もひどい悪人は出ずに、昔の殺人を暴く話で面白かった。伊岡瞬の「痣」の主人公も刑事で妻が殺され失意の中で起こった事件の解決と妻の犯人捜しを行う。主人公の真壁という刑事は前述の加賀恭一郎とは違ってタフでハードボイルドな設定だが、若い相棒で軟弱な宮下と組んで行動する様子が可笑しい。この二人は「悪寒」「本性」にも現れる。

 

 やはり食わず嫌いというのはあまり良くなく世間を狭くする。息子の本を読むのもそうしたマイナス点を補うメリットがあるようだ。もう少しこの二人の本を読んでみようと考えているし、暗くていやだなと感じた「白夜行」の映画版を見てみようかという気になった。

 それにしてもオリンピックを本当にやるのだろうか。菅首相は重要なことは明言せず、答えにくい(国民が本当に知りたい)質問には答えない。責任を追及されるのを恐れて何もまともなことを言わない。能力のない管理職のようだ。丸川五輪大臣などいてもいなくてもいい存在だ。それでいて役人などがミスをすると責任をとらせる。いつから政治家はこんな風になってしまったのだろうか。英国のジョンソン首相が国民に向かって、多くの方がコロナで亡くなったことを詫び、すべて自分の責任だと言っていた。確かにコロナ初期のジョンソンの対応はひどかったし、こうした発言も政治的効果を狙ったものと言えるかもしれないが、それでも菅首相の泳いだ目で意味のない話をするのに比べると、政治家らしい雰囲気に満ちていたと思う。

 安倍元首相は菅首相のことを立派に職責を果たしているし、後継の首相も菅氏以外にはいないなどと持ち上げていたが、どんな思惑でこんなことを言っているのだろうか。少なくとも国民のことを考えての発言ではなく、前総理としての自分の責任を曖昧にするためか、今後の自身の権力維持のためとしか思えない。安倍氏の発言が本音ではないことはみんな分かっている。こんな見え見えの嘘しかつけない政治家とは何なのだろうか。政治家に嘘はつきものだが、国民が分からないか疑わしくても本当かもしれないと思わせるレベルの嘘をつくのが力量というものだろう。最近の権力者は見え見えの嘘をつき、それを正しいとごり押しする、要するに追加で嘘をつくことを平気でやる。これでは発言全部が嘘になってしまう。せめて正しい発言とうその比率は8対2くらいにしてほしいものだ。今までに何度も書いたが本当に今年オリンピックなどやったら、日本はダメになる。太平洋戦争に突入した時と同じだ。