今の権力者達は日本陸軍幹部のようだ

 12月にぎっくり背中をやったが1月9日にまた同じところを痛めた。激痛で起きているのもつらく丸一日横になっていた。年を取るとこういうことが良く起こるようだ。上手くやり過ごしていくしかないのだろう。一方でやり過ごすことが出来ないのが、最近の政治家達の発言だ。怒りを通り越して呆れるほどのものが多いが、ここでは特にオリンピックに関連した発言を見てみよう。

 元総理でオリンピック・パラリンピック大会組織委員長の森喜朗氏は年頭の挨拶で「私が考え込んだり、迷いが出てきたとしたらすべてに影響してくる。淡々と進めてい

くしかない」と語った。

 その後の講演会では「私の立場では『今年難しい』とは口が裂けても言えない」とも語り、直近の世論調査では8割の人が再延期か中止すべきとの意見だと言われると「こういう時期になぜ世論調査をやるのか、私は疑問だ」と答えた。

 

 菅首相はオリンピック開催は困難と多数の国民が考えていることについて「ワクチン接種が始まれば国民の雰囲気も変わってくるのではないか」と話し、ビル・ゲイツとの電話対談では「オリンピックを必ずやりきる」と言ったと伝えられている。

 

 菅総理生みの親ともいわれる二階自民党幹事長はオリンピックについて「開催しないという考えを聞きたいくらいだ」と言い放った。

 

 要するに現在日本の最高権力者達が’何が何でもオリンピックはやる’と言っているのだ。開催にどんなリスクがあるのか、どうすれば心配ないレベルまでリスクが減るのか、どんな状況なら開催を断念するのか、最終的な意思決定のタイミングは何時なのか、そんな当然の疑問に答えることもなくただ’やるしかない’と言い続けている。いわば思考停止状態で、それを国民にも求めている。今はやらないなどと考える時ではないという具合に。

 

 わたしはこうした発言を聞いていて保阪正康の「昭和の怪物 七つの謎」という本を思い出した。保阪氏が太平洋戦争の真実を探ろうとしてきた中で書かれた本で、当時生きていた人たちへのインタビューや現存する資料に基づいて著者の意見をまとめた力作だ。その最初に取り上げられたのが東條英機だ。この人についてはいろいろと語られているのでここではこの本に書かれたことだけを紹介したい。そのことで太平洋戦争を始め、戦況が悪化して敗色濃厚になっても戦いを続け数百万の命を無駄にした総理大臣と、上述した今の権力者達がいかに酷似しているか分かると思う。

 

 東條英機を見て分かる’選んではならないリーダー’には「精神論が好き」「妥協は敗北」「事実誤認は当たり前」という共通点があると言っている。一言で言えば’自省がない’ことだそうだ。こうしたリーダーは’私情がらみの人事を行い、諫言の士より服従の部下、そして何より自分の言い分に一切口を挟まない幕僚’を好んだ。

 

 また米国との開戦に反対する海外駐在の武官が客観的データを伴った報告書を送ってくると、こうした者たちは弱虫、小心者として退けたという。飛行学校で、’君らは敵機を何で撃ち落とすかと問い、高射砲で撃墜するとの答えに「違う。精神で撃墜するのだ」と答えた。昭和19年6月にサイパンが陥落し敗色濃厚の時には「まだ恐るるには足りない・・・・・・日本人が最後の場面に押しつめられた場合に、何くそと驚異的な頑張りを出すことは私は信じて疑わない」と語った。東條は「戦争は負けと思った時が負け」と考えていたという。

 まだ他にも似たような話が紹介されているが、興味を持った方は読まれたら良い。わたしが感じたのは無能なリーダーの下で日本は太平洋戦争を始めて、たくさんの命を失い、国土は焦土となったのだ。今の権力達のもとで似たようなことが起こらないとはいえないのが恐ろしい。こうした権力者を選んだのは我々国民なのだから、次回の選挙はしっかり考えて投票すべきだと思う。選ぶに値する人がどれだけいるのかという問題はあるけれど、その中でも信頼できる人に国を任せるしかない。