Music Airは楽しい

 CSチャネルに’ミュージック・エア’という番組がある。フジテレビの’ミュージック・フェア’に似たタイトルだが、中身は全く別のものだ。主に欧米の古い(2-30年前の)音楽と映像を流しているのだが、これが中々楽しいのだ。当時耳にしたことがある曲を、あらためて映像付きで見て’こんな歌手、グループだったのか’と再発見することがよくある。(もちろん、もっと最近のものや日本人グループの演奏を流すこともあってそれはそれで興味深い)

 

 特に有名ミュージシャンやある音楽のジャンルについての特集はとても面白い。ロックの歴史やビートルズイーグルス、クイーンやジミ・ヘンドリックスエリック・クラプトンのデビューからメジャーになるまでの経緯を音楽ジャーナリストやバンド仲間へのインタビューと昔の映像で表しているのだが、いろんなエピソードが紹介されて思わず引き込まれてしまう。

 

 この番組で初めて知ってファンになったアーティストもいる。ボニー・レイット(Bonnie Raitt)という女性歌手で、ロックシンガーでありギタリストとしても有名だ。こう書いているわたしも番組を見た時は誰だか知らずに、物凄くギターが上手い、イケてるおばちゃんだなという印象だったのだ。その後CDを買い来歴をインターネットで調べてそれなりの情報を得た。わたしが見たのは20年以上前の映像だったが、最近の写真を見た時はすっかり婆さんなのでびっくりした。それもそのはず彼女は1949年生まれなのでわたしより一つ年上の69歳だ。昔の映像を見てイメ-ジを作っていたわたしは、初恋の人に50年ぶりにあってがっかりした男のようなものかもしれない。

 

 彼女はカリフォルニア生まれだそうだが、10代後半に東部へ移住しその後ハーバード大学をでた。22歳の時にワーナーブラザースから最初のアルバムを出し、それなりの評判は得るがヒットしたとは言えなかった。その後15年間に8枚のアルバムを出したがヒットせず、契約を打ち切られてしまう。しかしその後キャピトルに移籍すると第一作目のアルバム’Nick of Time' が大ヒットしグラミー賞を得る。40歳の時だった。典型的な遅咲きのスターである。ブルースが好きな人は一度聴いたらはまるかもしれない。

 

  もう一つこの番組で知った情報はポールマッカートニーのアルバムについてである。これはチョットしたファンなら知っていることでわたしが知らなかっただけなのだが、ポールが2012年にハリウッドのキャピタルのスタジオで録音したものだ(NYでの録音もあるらしい)。この録音は少人数の知り合いを招いてのライブのようで、その様子を2-3週間前の放送で見た。これは有名な出来事で2012年にはWOWWOWで放送されたらしいが、そんなことは全く知らないわたしは’ミュージック・エア’の放送で初めて観てすっかり感心してしまったのだ。

 何に感心したかというとポールの音楽にだ。このアルバムではポールがジャズを歌っている。ということは一部を除き昔のジャズの曲ということで、それらをポールはプロのジャズ歌手のようにしっとりと歌いあげている。まるでナット・キング・コールのようだ。ビートルズの時のポールのイメージしかないわたしはこの歌唱力にすっかり感心した。演奏もジャズのミュージシャンが行い、ポールは歌に専念だ。さらに驚かされるのはエリック・クラプトンがギターを弾きスティービー・ワンダーがハーモニカ(ブルースハープ)を吹いている曲があることだ。二人ともにインタビューに答えポールと共演できたのをとても喜んでいたのが印象的だった。

 

 このように’ミュージック・エア’は楽しい番組で、TVサーフィンをするわたしとしてはゴルフ番組、映画に加えて好きな番組リストに入っている。日本の歌にもこうした番組があるといいと思うのだが。BSなどでは時々地上波とは違った切り口の音楽番組もあるが、ここまでしっかりしたものは少ない。音楽ジャーナリズムの成熟度の違いなのだろうか。