クライストチャーチ 街散歩

 テカポ、マウント・クックから帰った翌日はクライストチャーチ近郊でゴルフを予定していたが、妻の足の怪我で急遽取りやめにした。そのかわり市内観光が出来たので怪我の功名と言えるかもしれない。2011年の大地震の後、街の復興が遅れているとの情報もあったので観光するつもりはなかったのだが、実際街を回ってみるといろんなことを目にし感じることが出来て良かったと思う。

 ホテル近くのカフェで遅い朝食をとった後で、すぐそばの観光案内所で情報を仕入れた。10時半発のバス送迎のゴンドラツアーが良いと勧められたが、もう10時15分を過ぎていてバスの発着場所までは歩いて15分ほどかかるという。当然駄目だと諦めたら、案内所の元気な女性がバスの運転手に電話して50mほど行ったところの通りで拾ってもらえるようにしてくれた。通り道らしいのだが、日本では考えられないことだ。万事ゆったりとしているお国柄でこうしたフレキシブルな対応は他でも経験した。もっともレストランなどもこの調子で、頼んだ飲み物や食事も忘れたかと思う頃に出てくるため、せっかちな妻がイライラして罪のないわたしは閉口した。

 ゴンドラはバスで20分ほど行った市街地の南東にあり440mほどの山に登る。普通のゴンドラだが山の頂上からみるとこの街が海の近くにあることが分かる。


街に戻ってからまず有名なカテドラル・スクエアに行く。クイーンズタウンのシンボルだった大聖堂と尖塔があった場所だ。2011年の地震で大聖堂は大破し、尖塔は崩れ落ちた。現在の姿はこうなっている。


裏から見たもの。

完全に崩れ落ちた尖塔の代わりなのか、スクエアにはこんなモニュメントも建っている。

 2017年に大聖堂の再建が決定し、2024年の完成を目指しているようだが工事が順調に進んでいるのかよく分からない。特に日本で2年前の地震で大きなダメージを受けた熊本城を、街のシンボルとして早く再建するためのプロジェクトが着々と進んでいることを考えるとここはスローだなと感じてしまう。もちろん日本の城と石の大聖堂ではダメージも違うし、復旧のやり方も違うので簡単には比較できないかもしれない。また先に述べた国民性の違いもある。しかし同時に感じるのは経済力の問題である。何度も述べたようにこの国の人たちはとても豊かに暮らしている。しかし国力というか国の経済力という点ではやはり小さいのが事実だ。人口は少ないし、大きな産業もないからGDPは世界で52位だ。国の経済規模なり活動が小さいと、地震からの復興としてインフラへ投資をする時に十分な予算がさけない。だからわたし達から見ると復興のスピードが遅いと感じるのだと思う。
 ただ52位のGDPも人口一人当たりにすると21位になる。ちなみに日本はGDPは3位だが一人あたりは25位でニュージーランドより下だ。GDP2位の中国は一人あたりだと75位だ。人が13億もいるからしかたないのか。この問題は興味深いもので国力とか国の経済力の大きさと国民の豊かさは必ずしも一致しないということを物語っている。北欧の国々に行った時も同じような印象を持った。それなりの国土の広さがあり、人口が少ない国の人たちの生活は豊かだということになる。しかし一方で国力が小さいといざという時に使えるパワー(経済力や軍事力とそのベースになる人的資源)が小さくなる。国としての力などは(特に軍事力)必要なくて、国民が豊かならそれでよいと信じている人が日本には少なからずいるがそんなに単純ではないだろう。中国やロシアの動きを見ているとわたしはそんなに楽観的にはなれない。

 話がそれてしまったがクライストチャーチがゆっくりだが復興の道を歩んでいるのは確かだ。大聖堂の修復だけではなくカテドラル・スクエアにいろんな公的施設をあわせて建設するというプロジェクトがあるようで、こんな看板があった。強い決意が伝わってくる。

 街の中心の主要なところを見るにはトラムが便利だ。乗り降り自由で中心部をとてもゆっくりと30分くらいかけて回る。老人の車掌がとても人懐っこく、乗客とおしゃべりしたり、駅で止まると歩いている観光客に道案内をしたりする。時間への配慮などはなさそうで、運転手も車掌が乗るまで待っている。


街には地震の後が残り痛々しいところもあるが、旧来からの建物が残っているところは英国的で美しい。


トラムのルートにはカンタベリー博物館や広大な植物園もある。




またいたるところに壁面アートがあり、街を元気付ける一環のようだった。



次回はミルブルック・リゾートとクイーンズタウンについて書きます。