テカポ湖とマウント・クック

 オークランドからの飛行機が遅れクライストチャーチに着いたのは夕方だった。空港から市街地までのタクシーから見た住宅街は一軒一軒が広く、平屋が多いとてもきれいな街並みだった。しかし市の中心にあるホテルの周りは空き地が目につき2011年の地震からの復興がまだまだだという印象を持った。クライストチャーチの感想については次回書くとして、今回は翌朝からツアーで行ったテカポ湖とマウント・クックについて書きたい。

テカポ湖とマウント・クックはフィヨルドで有名なミルフォードサウンドと共にニュージーランド観光の目玉だ。 ミルフォードサウンドクイーンズタウンから行くことになるが、クイーンズタウンでは他の計画がある上、フィヨルドノルウェーで見たのでここはパスすることにした。クライストチャーチをバスで8時前に出て途中休憩をして11時半にはテカポ湖に着いた。スーツケースとゴルフバッグは3日後に戻るホテルで預かってもらったので小さな鞄(キャリーオン・ラゲッジ)だけで身軽だ。この日はテカポ湖のホテルで1泊するので下車したのだが、ほぼ満席のバスで降りたのはわたし達だけだった。バスツアーと言ってもいろんな客をまとめているらしく、他の客達はこのままマウント・クックに行くようだ。国籍も様々だった。湖の近くのひなびたホテルに泊まったがそれなりに趣はあった。しかし本来泊まるホテル(旅行会社の都合で変更された)に比べると施設的には大分落ちるようだ。VELTRAという旅行会社のツアーだったが、申し込んだ後で日本にいた時にホテルの変更を言われた。満室とかの理由があるのかもしれないが、ホテルの情報を持たない客に対してこうしたやり方はフェアではないと思う。これでは早めに申し込んだ意味がないしホテル情報があれば旅行会社の依頼を断ったかもしれない。もっともホテルのスタッフの対応は気持ちよく楽しく過ごせた。

 テカポ湖は世界一星空が綺麗な場所としてとても人気がある。星空ツアーの日本人ガイドの説明によれば人口は500人で日本人は35人いるという。観光客はその何倍もいてわたし達が行ったときはイースターの連休とかで普段より人が多いとの話だった。テカポ湖は湖そのものとしても美しく朝、昼、晩と表情を変える。また湖畔には旅行パンフレットなどに必ず載っている'善き羊飼いの教会(Church of the Good Shepherd)'がありアクセントを添えている。 




昼食は湖畔の大きな土産物店につながっている湖畔亭というレストランで食べた。ここのサーモン丼は有名でガイドブックに載っている。とても美味で、ここ以外でもこの国のサーモンはどれもおいしかった。可愛くて人当たりの良い日本人ウェイトレスの説明では山形の料亭が運営しているそうだ。従業員の多くは現地の日本人だがトップは山形から派遣されているという。客の大半は外国人で白人、中国人など様々だった。この女性から星空ツアーを催している業者を聞き食事後に申し込みに行った。

夕方の湖の様子と教会の横にある犬の像。犬の像はこの地域の開拓時に貢献したことによるものだそうだ。




土産物屋、旅行業者、ホテルくらいしかない町の中心にはこんな動物の像がある。最初の口の長い鳥はキウィというこの国の国鳥だ。

星空ツアーはバスでマウント・ジョン天文台というところに行く。天文台から星を見るのではなく同じ場所から見るのだ。たぶん星を見るのに適した場所なのだろう。観光用に大きな天体望遠鏡も2台用意されている。テカポの星空の写真は色んなところに紹介されており、この星空を写真にしないわけにはいかないと事前に調べたらコンパクト・デジカメでも撮れるとの記事があり俄かカメラマンと化した。確かにキャノンのコンデジには星空モードというのがあり、それをセットして三脚で固定すればよいとなっている。わたしは気合を入れて迎えのバスを待った。男女一人ずつの日本人ガイドがいるツアーなので参加者は全員日本人だ。15〜6人はいたと思う。

南極探検隊が着るようなずしっと重たいコートが支給されこんなもんいるのかと思いながら手にする。ガイドの説明では山からの情報では曇っているのでもしかしたら星は見えない。その場合は天文台に入ってそのスタッフから天体観測の話を聞くそうだ。着いてみるとやはり雲が多かったがそれなりに星は見える。日本ならすごく見えるというレベルだ。南十字星とその他の星座の説明を聞く。年のせいかガイドが示す星が良く見えない。せいぜい二等星くらいで三等星となるともうかすかに見えるくらいだ。その後天体望遠鏡で見たがこれはとてもよく見えたが星に疎いわたしはよく分からなかった。
その合間に俄かカメラマンは写真を撮ろうと三脚を置いたのだが、風が強くなり携帯用の三脚は簡単に倒されてしまう。暗い中手で押さえていたら手が写ってしまったりと全く上手くいかない。ただ強風のおかげで雲が一掃され星空が一面に広がった。同時に気温が急に下がり支給されたコートを着ても震えるくらいの寒さとなった。よってここでの写真は全員の集合写真だけです。(写真をクリックして拡大すると真ん中で帽子を被っているのが小生です)

10時半ころホテルに帰ったが、こっちは風もないので湖のそばに行き星空を撮った。素人の付け焼刃はどうも上手くいかないが、後日クイーンズタウンのホテルのベランダからはもう少し良いのが撮れた。夜の湖の写真もついでに。

翌日は11時過ぎのバスでマウント・クックに行くのでそれまで湖の周りを散策。朝の湖。



畔に行くと波があるのが分かる。

マウント・クックまでは小一時間。有名なハーミテージ・ホテル(Hermitage)に泊まるのだが、チェックインまでの時間にカフェで昼食。山の中のホテルとは思えない規模と施設を持ったホテルで、部屋の広さも設備も素晴らしく大きな窓からは山が目の前に見える。



部屋から見たマウント・クックは雲に隠れていたが、周辺を見て6時ころに帰ると雲が去りその姿が現れた。(下の2枚は部屋から窓越しに撮ったもの)3742mの頂は中々感動的で、日本に来た外国人が富士山を見る気持ちはこんなかもしれないと思った。


翌朝は快晴でマウント・クックをはじめとする周囲の山がはっきりと見えた。




マウント・クック周辺にはトレッキングコースが数多くあり、30分からガイドと一緒に行く1日コースまである。わたし達は短いところを少し歩いたが、妻の足の具合がもう一つなので歩きは諦めてホテル内にあるエドモンド・ヒラリーアルパインセンターというところで時間を過ごした。山歩きの好きな人にはここはお勧めだと思う。ニュージーランドに行きここだけで過ごしても1週間くらいは飽きないのではないか。サウス・アルプスと言われるくらいでヨーロッパの山に行くより近いし時差も少ない点がいい。
エドモンド・ヒラリーはネパール人シェルパテンジン・ノルゲイとエベレスト初登頂を達成したクライマーである。彼はニュージーランド人だがイギリスの登山隊のメンバーに加わり偉業を達成した。若いころマウント・クックで登山の基礎を身に付けたのでここに記念館がある。彼の様々な写真や年譜と共に使った飛行機や自動車、のちの南極探検の時の雪上車(レプリカだと思われるが)展示してある。ここには3D映像も見せられる小さな映画館があり、30分から1時間を超える映画が見られるのだ。3Dで見たマウント・クックは迫力満点だったし、ヒラリーの生涯を描いた映画も面白かった。




近くにはビジターセンターもありこの国立公園全体が把握できる模型などが展示されている。

2時半のバスに乗りクライストチャーチに戻ったのは8時ころになってしまった。
次回はクライストチャーチについて書きます。