無能な人間に権力を持たせた結果

 楽天が仙台に戻り田中が完投して勝利をあげた。仙台ベガルタも開幕2連勝である。わたしはどちらのファンでもないが彼らを応援したくなるし、多くの東北の人たちが地元のプロスポーツ選手の活躍を喜んでいるのをみると嬉しくなる。もちろん復興はこれからだし、数え切れないほどの困難や苦労が待ち受けていることだろう。スポーツ選手がするように、その苦労のほんの一部でも肩代わりできたらというのが私たちの気持である。義援金を送ったり増税もやむをえないと考えるのも、そうした気持ちからきている。同時に復興計画を作り上げ着実に実行するのは、こうした善意や気力だけでは不十分で、冷静な分析と判断力、困難に怯まない覚悟が絶対的に必要だと思う。

 しかし国民の善意と苦労に負けない気持は十分にあるのに、現実の復興計画を作り実行する人間がまったく不足していることに気付かされ暗い気持ちになる。私たちが選んだとはいえ、この国の政治家は何故ここまで程度が悪いのだろうか。未曾有の危機に解散などすべきではないという意見もあるが、やはりここでもう一度国民が政治家を選びなおし、新たな気持ちで再出発するというプロセスをとるべきだと最近つくづく思う。

 特に海江田経済産業大臣の発言には耳を疑った。彼は東電の役員の報酬カット、50%と報道されているが、記者会見の場でこれでは不十分だと批判したのである。これだけの大事故を起こした張本人が、そのくらいのペナルティでは生ぬるいというのが発言のベースにあるのだろう。
 今回の原発事故がここまで悲惨なものになった原因として、東電の災害対策が十分ではなかったことが言われているが、そのことは専門家が適切な調査を行って結論を出すべき問題だし、その際には原子力安全委員会原子力安全保安院がどう機能していたのか、全て東電の責任にしてよいのかなどが検証されなくてはならないだろう。もし委員会や保安院に問題があったとするなら、政府の責任も免れないだろう。こうしたことを議論しない段階で東電にのみ責任をかぶせるような態度で、役員の給料にまで口を出すのはどんな権限があってのことだろう。海江田氏は自分には東電の役員の給料を決めることが出来るほどの権力があると考えているのかもしれないが、全くの思い違いだ。

 厳密な調査の結果、明らかに東電幹部だけが重大な過失を犯していたとの結論が出たなら、該当のマネジメント達を告訴すべきだろう。正式な結論を待つには時間がかかりすぎると考え、かつ海江田氏が現時点で安全委員会にも安全保安院にも、そして政府にも責任はなく、絶対的に東電の責任だと確信しているなら、東電の役員を解雇することを要求すべきだろう。それほど杜撰な経営をしてきた人達にこれ以上を経営を任せるのは不安だと考えるのは当然だからだ。そして新しい能力がある人達を選任するように動くべきだ。もっとも無知な彼なら、自分に役員の解雇も選任も出来る権限があると考えているかもしれないが。

 新しい人達に経営を任せたら報酬はそれなりのものを払わなくてはならない。もし外国人を雇うとしたら、能力と実績がある人を1億円くらいで探そうとしても無理である。有能な人にはそれなりの報酬を支払わなくてないけない。東電のこれからの経営は大変難しいものになるし、責任も重いから、現在の経営者にもそれなりの報酬を払うのは当然のことである。もし事故の責任が明確になったら株主や被害者が経営者に損害賠償を求めることは妥当だ。その額が彼らの報酬の半分以上になることもあるだろう。それなら理解できるし、海外の投資家も日本は常識的な論理が通用する国だと思うだろう。

 海江田氏は事故の責任をとることと、東電を経営することへの報酬をごっちゃにして議論している。高校生だってこんな愚かな議論はしないと思う。彼にはこの機会に自分の存在を国民に売り込もうとする気持しかないようだ。彼には東電の役員の報酬を決める権限はないし、またあったとしても本当に東電だけに責任があるのか、また報酬を半減することに文句を言うことで責任を取らせたことになるのかは疑問だ。それは多くの国民が感じていることだが、彼にはそのことがわかっていない。それは菅首相が、自民党の谷垣総裁に副総理への就任を依頼し断られると、自民党のせいで全党一致での体制が出来なかったと吹聴して、菅政権への支持を高めようとして失敗したことと同じ浅はかさだ。

 私たちが原発の事故について知りたいのは、事故が起こってすぐ菅総理原子力安全委員会長と福島に行ったことが事故後の処理対応を遅らせ事態をここまで深刻にした、また米国の支援申し出を断ったことも事態の悪化を招いた、との意見に対する真面目な分析と結論である。その結果次第では事故を悪化させた原因は菅総理にもあるかもしれないからである。その事に口をつぐんで東電だけに責任を負わせようとするならば、本当の問題解決にはならない。

 以前にも書いたが、今回の大震災は普段では明らかにならなかったことを明るみに出した。その最たるものは誰が無能な政治家かということであり、そうした無能な人間に権力を与えることの危うさである。今回の震災で日本は駄目になったりはしない。もし駄目になるとするなら現在のような愚かな政治家達が居座ることによる。もう十分だ。早く選挙をしてこれらの無能な人間を政治の場から取り除かなくてはいけない。